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史上最速だけじゃない。川崎は日本史上最良のサッカーを展開した (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

 攻撃力が増せば、失点が増えるものだが、川崎のサッカーはそうならなかった。先述のとおり、平均失点も1以下(0.9点)に抑えている。良質な守りができていたからだ。高い位置から網を張るプレッシングサッカーである。

 相手ボールに転じた時、幅を取って構える両ウイングが、そのまま相手のサイドバック(SB)に圧力を掛けることができたので、攻守の切りかえがスピーディかつ円滑に行なわれたのだ。高い位置で早々にボールを奪うことができれば、瞬間、相手の守備態勢は崩れているわけで、得点のチャンスは膨らむ。得点力が大幅にアップした原因は、この今日的な守備力に起因していた。

 こう言ってはなんだが、今季の川崎のサッカーは、日本代表を含めて、これまで見てきた日本サッカーの中でどれよりも良質だったと断言できる。ハイレベルで攻撃的かつ魅力的。サッカーの普及発展に貢献する模範的なサッカーを展開したうえでの優勝だ。

 それを指揮した監督が、鬼木達という日本人監督であることも特筆すべき点になる。正直言って、日本サッカーを構成するさまざまな要素の中で、日本人の監督は、これまでレベルを下げる役割を果たしてきた。監督のレベルは、選手のレベルに劣っていた。世界に通用する監督は見つけ出しにくかった。代表監督は外国人監督に任せるべき。そう言いたくなる理由でもあったが、今季の鬼木監督は、そうした概念を打ち破る采配をした。世界で通用するサッカーを披露した。

 実際、中心選手は昨季とそう変わっていない。三笘薫(左ウイング)と山根視来(右SB)が加わったぐらいだ。外国人も5人枠を満たしていなかった。助っ人の個人能力に頼るサッカーではなかったのだ。

 鬼木監督の采配で目に付いたのはメンバー交代だ。今季はコロナ禍にあって、選手の負担を軽減しようとメンバー交代は5人制(従来は3人)で行なわれたが、鬼木監督はその枠を常にフルに使い続けた。枠を使い切らず、4人の交代で終わったのは、これまで30戦した中でわずか2試合。レギュラーとサブの境界を、チーム内に存在させない選手起用を行なったことも、チーム全体の結束力を高める要因になっていた。

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