2020.11.26

史上最速だけじゃない。川崎は日本史上最良のサッカーを展開した

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

 ガンバ大阪を倒し、2年ぶりの優勝をJリーグ史上最速で飾った川崎フロンターレ。そのサッカーは、これまでとは中身が大幅に違っていた。2018シーズンの1試合の平均得点と平均失点がそれぞれ1.7、0.8だったのに対し、今季はそれぞれ2.6と0.8。1試合あたりの平均得点が大幅に伸びている(0.9点)。優勝を決めたガンバ大阪戦(5-0)がそうであったように、攻撃力で圧倒して勝利する試合が多くあった。

 従来も攻撃的サッカーの範疇に収まるスタイルだった川崎だが、それが何倍にもスケールアップした格好だ。

優勝を喜ぶ中村憲剛ら川崎フロンターレの選手たち 最も変わったのはどこか。昨季までの攻撃的サッカーは、言い換えれば中盤サッカーだった。もう少し言うならば、中央のサッカー。ピッチの真ん中でショートパスを繋ぎながらボールを支配しようとするパスサッカーだった。

 昨季までの布陣、4-2-3-1(あるいは4-4-2)は、4-2-2-2に酷似した従来の日本サッカーの枠に収まるスタイルだった。いま振り返るならば、いまひとつインパクトに欠けていた。

 それは、昨季優勝した横浜F・マリノスのサッカーと比較すれば一目瞭然だった。横浜FMが展開した攻撃的サッカーのほうが、昨季の川崎の攻撃的サッカーより断然、華があり魅力的で、今日的サッカーに映った。昨季4位に終わった川崎のパスサッカーは、くすんで見えたものだ。

 それから1年。両者の関係は逆転した。どちらが魅力的に見えるかといえば川崎だ。川崎は今季、昨季の横浜のお株を奪うようなサッカーを見せつけることになった。ちなみに昨季の横浜FMは、平均の得点、失点が2.0、1.1だったので、お株を奪うというより、凌駕するサッカーを見せつけたと言うべきだろう。それは「日本サッカーのマックス値を更新するサッカー」と言っても過言ではない。

 その気配は開幕当初から漂っていた。中盤重視型からサイド攻撃重視型へ大きくシフトしたことが、4-3-3という新布陣に見て取ることができた。それまでの攻撃に不足しがちだった幅が、布陣の変更によってもたらされたのだ。悪く言えばチマチマとしていたパス回しは一転、ダイナミックに変貌を遂げた。大きく幅を取りながら、サイドから真ん中を突くこのサッカーは効率的でもあった。得点力が増した大きな原因だ。