Jリーグアジア戦略の現在地。ティーラトン獲得などプラス効果多数 (5ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • 高橋 学●撮影 photo by Takahashi Manabu

<ノウハウを無償で提供する>

 アジア戦略がスタートしてから早速、タイやマレーシアなど東南アジア各国のリーグへ視察に訪れた。すると驚くべき待遇を受けたという。

「僕らが訪問すると各国リーグの会長やクラブのオーナーが対応してくれたんですね。彼らは財閥の会長や有力な政治家であったりします。皇太子に会えてしまうこともありました」(山下)

 そんな各国の要人に出迎えられ、自分たちが思っていた以上に、彼らが日本の強さの理由を学びたい意欲を持っていたのに驚いた山下は、あることを思いつく。それはJリーグのノウハウを無償で提供することだった。

「ただノウハウを売るよりも、彼らとよい関係を構築するほうが大切なのではないかと思ったんです。そこでノウハウを無償で提供する代わりに彼らのビジネスネットワークを日本の企業や自治体に紹介してもらえれば、よりJリーグの存在価値を高められるのではないかと考えました」(山下)

 最初はこの無償提供の話に、各国リーグの会長やクラブオーナーは懐疑的な反応を示した。

 そんな彼らに対し山下は、日本サッカーが成長するためにアジア全体がレベルアップする必要があり、そのためにあらゆる面で日本が手を貸し、「ゆくゆくは東南アジアからワールドカップ出場国が出るよう共に成長していこう」と力説した。その見返りに、彼らのビジネスネットワークを生かして日本のクラブや企業と東南アジアのクラブや企業をつないで欲しいと話すと、彼らはすぐに理解を示し、協力的になったという。

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