U-23日本代表、パリ五輪に王手もカタールに苦戦 戦い方が不安定な原因は?

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

 終わってみれば、4-2。U23アジアカップ準々決勝・カタール戦は、日本代表にとって苦しい試合をものにしたという意味では喜ぶべき一戦だが、必要以上に喜ぶのは格好悪い。ホッと胸をなでおろすぐらいにしておきたい、あまり胸を張れない勝利だった。

 試合は開始2分。プレッシングの産物として、山田楓喜に打ってくださいと言わんばかりのプレゼントパスが贈られた。山田が自慢の左足をシャープに振り抜くと、シュートは強烈な弾道となってニアサイドに飛び込んでいった。

 文句なしの滑り出しだった。

U-23カタール代表戦の延長前半、ゴールを決めて駆け出す細谷真大photo by Kyodo newsU-23カタール代表戦の延長前半、ゴールを決めて駆け出す細谷真大photo by Kyodo newsこの記事に関連する写真を見る 前戦の韓国戦は、試合を優勢に進めながら0-1で惜敗。準々決勝の対戦相手がインドネシアではなく開催国のカタールに決まると、苦戦を予想する声に包まれた。1996年アトランタ五輪から7回連続本大会に駒を進めている日本にとって、8回連続出場へのハードルは上がったかに見えた。こうしたなかで生まれた山田の先制弾は、「絶対に負けられない戦い」の緊張感を和らげるにはもってこいの一撃だった。

 カタールは日本に対し5バックで臨んできた。後ろを固める守備的な態勢を敷きながら、開始2分で先制弾を浴びた。ポルトガル人のイリディオ・ヴァレ監督の作戦は完全に裏目に出た。以後は0-1の状況を、守備的な態勢のまま過ごすという、論理的矛盾を抱えながら戦う状況が続いた。

 そこゆえ、日本ペースとなるのは当然だ。追加点は時間の問題かと思える試合展開だった。それだけに前半24分の失点はある意味、「事故」と呼べるものだった。右サイドからアバウト気味に上げられたクロスボールに対し、関根大輝がカタールFWアフメド・アルラウィに競り負けてしまう。そのヘディング弾はゴール左上隅に、鮮やかな弧を描きながら吸い込まれていった。

 問題はその後だ。日本の選手はそれを事故、あるいはマグレと割りきることができなかったようだ。これを機にペースを崩し、バタバタし始める。具体的には、攻撃がきちんとできなくなった。総合力で上回るのは我々だという確信を、前半の24分間の戦いを通して持てなかったようだ。「絶対に負けられない戦い」の呪縛に襲われたことが、試合を難しくした原因と考えるしかない。

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