誰もが認めた野洲高の天才は「『SLAM DUNK』の仙道タイプ」だった (3ページ目)

  • 鈴木智之●取材・文 text by Suzuki Tomoyuki
  • 高橋 学●撮影 photo by Takahashi Manabu

「ケンには、中高の6年間で何回アシストしてもらったか。感覚的には(中村)憲剛さん(川崎)タイプです。『俺のことは見えてへんやろうな』と思って走っていると、パスが出てくるんです。その感覚を味わったのは、人生でケンと憲剛さんのふたりだけです。『うわ、ほんまにパス来たよ』と驚くぐらい」

 選手権決勝の鹿児島実業戦。延長戦で瀧川陽が決めた「高校サッカー史上、もっとも美しいゴール」のお膳立てをしたのも平原だった。まず、田中のサイドチェンジを受けた乾が、中央へドリブルで切れ込む。そしてヒールでボールを落とし、平原とスイッチする。

 平原は当時を振り返って言う。

「(乾)貴士から、ヒールでパスが来るとは思っていました。でも、ちょっとだけパスがズレたんです」

 平原は最初、ゴール前にいる瀧川に出そうとしたが、パスコースがないと見るや、右サイドをオーバーラップした中川真吾の足元に、そっと置くようにパスを送った。

「ほんまはゴールに直結するパスを出したかったんです。でも、パスコースがなかったので、右に走っている(中川)真吾に出しました。ゴールが決まった瞬間は、勝った、行けた、と思いましたね」

 大会を通じて攻撃の中心として活躍し、7ゴールに絡んだ平原だったが、楠神に言わせると「ケンが選手権で特別に調子がよかったイメージはないです。あれぐらいのパスは、いつも出してましたから」となる。

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