VAR導入で今季Jリーグに起こること。デメリットをプラスにできるか (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 テレビ放送もその間を持て余し気味だった。VARに入る前から白黒がほぼ決着していたこともあるが、緊張感を伝えられずにいた。

 サッカーは流れが途絶えない競技だと言われる。ケガや得点シーンを除けば、常にプレーオンの状態にあるところに、他の競技との違いがある。だが、この試合で最初に発生したVARのシーン(コーナーキックの流れから神戸のドウグラスがゴールを決めたが、副審がオフサイドの判定)も、これまでなら即、FKで再開されていた。そこに「待った」が入る可能性が生まれたわけだ。

 得点シーンで、少しでも微妙な箇所があれば、VARは必ずと言っていいほど入る。欧州サッカーを見ていて、そうしたシーンに直面すると、もはや選手も大喜びしなくなっている。ファンも同様だ。慣れてしまったのか、スタンドに即、歓喜が渦巻くシーンは減っている。サッカーの特性である流れを止めてしまうデメリットを、VARは抱えている。

 マリーシア。ホームタウンディシジョン。誤審も含め、これまで"必要悪"というか、肯定されてきた一種の曖昧さも、VARによって奪われようとしている。ただ、これらは試合の流れの寸断とは種類が違う。フェアプレーの精神が高まり、誤審が減ることは、あながち悪い話ではない。

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