王者・青森山田が断然優位のなか、帝京長岡に勝機を得るカギはあるか
青森山田(青森県)の連覇なるか。第98回全国高校サッカー選手権大会において、それがひとつの注目点であることは間違いない。
今年度の青森山田は、全国高校総体こそ3回戦敗退に終わったものの、プレミアリーグEASTでは2位に勝ち点9差をつけ、堂々の優勝。同WESTを制した名古屋グランパスU-18との高円宮杯ファイナルも制し、ユース年代の日本一に輝いた。
高校とクラブユースの垣根を超え、全国から強豪チームが集まるプレミアリーグに比べると、高校選手権は、歴史や注目度はともかく、レベルは落ちる。それを考えれば、青森山田が、頭ひとつ抜けた優勝候補と見なされるのは当然のことだろう。
昨年度の高校選手権を制した当時の青森山田は、DF三國ケネディエブス(アビスパ福岡)、MF壇崎竜孔(だんざき・りく/コンサドーレ札幌)、FWバスケス・バイロン(いわきFC)など、優れたタレントを擁してはいたが、選手個々の能力が目立つ分、軽さや緩さが同居している印象もあった。
しかし、今回のチームには、そうしたマイナス要素が感じられない。選手個々のタレント性では昨年度のチームには及ばないかもしれないが、チーム全体が常に神経を研ぎ澄まし、その状況でやるべきことを忠実にこなすという点では、1年前のチームよりも上だろう。攻守の切り替えは速く、一度はがされた前線の選手もプレスバックをサボらない。そうしたスキのなさは、今大会を通じて目を見張るものがある。
高円宮杯ファイナルで名古屋に勝ったあと、青森山田の黒田剛監督が「勝利の方程式を貫いた」と話していたが、そんな水も漏らさぬ戦い方こそが、多くの苦い経験からたどり着いた、勝利への道なのだろう。
高校レベルでは頭ひとつ抜けた存在の青森山田 実際、今大会でも青森山田は2回戦から登場し、準々決勝までの3試合で13ゴールを量産。その強さを見せつけている。
とはいえ、青森山田のサッカー、すなわち、負けのリスクを最大限排除したサッカーは、ある種の凄みを感じさせ、高校生がここまで徹底できるのかと感服させられる一方で、誤解を恐れずに言えば、面白味には欠ける。パスをつないで攻撃を組み立てる技術重視のスタイルを志向する高校が増えるなか、青森山田のサッカーは、10年、いや、20年ほど時代を遡っているかのようにさえ感じられる。
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