難病の前社長がFC岐阜に提言「今こそ育成型クラブに舵を切るべき」 (2ページ目)
FC岐阜は前編で書いたように、毎年残留争いを演じて来ました。そのため監督・コーチも次々と変わるのに加えて、残留のために夏の補強で選手を入れるといった、急場しのぎをずっと繰り返し、落ち着く期間が全くありませんでした。
昨シーズンまでFC岐阜に5年間在籍して現役を引退した難波宏明氏は、今シーズンからFC岐阜のアンバサダーに就任して、試合や各種イベント等に参加してサポーターとふれあいの場を持っています。また、私の社長在任中にプレーしていた美濃加茂市出身である益山司氏は、現役引退後、FC岐阜の小学生向けのスクールコーチに就任して、未来のFC岐阜を背負うかもしれない子供たちを指導しています。FC岐阜のチームドクター及びトレーナーは、JFLの頃から10年以上クラブを支え続けてくれています。このように、選手だけでなくチームスタッフも岐阜県にゆかりの深い方が増えれば増えるほど、FC岐阜はより強くなると思います。
私が社長になる前の社長人選の条件は3つありました。①経営経験がある。②スポーツ・エンタテインメントに深い知識・経験がある。そして最も重要な条件は③岐阜県出身、でした。
岐阜県以外のクラブだったとしたら、私はこれほどやりがいを持って社長業務を出来なかったと思います。また、スポンサーも私が岐阜県出身だったからこそ、耳を傾けてくださった部分も大きいと思います。それほど岐阜県出身ということは重いのです。
FC岐阜はJ3に降格したことで、ようやく残留争いから解放されました。J3以下に降格することは、現在のレギュレーションではありません。よく、1年でJ2に戻れなかったら終わりだ、という声を耳にします。事実、数年間J2に戻れていないクラブはいくつもあります。しかしながら、批判を覚悟で申し上げますが、私は無茶をしてまで1年でのJ2復帰を望んではいません。
順位を気にせず戦えるJ3だからこそ出来る育て方があると思うのです。今こそFC岐阜は『育成型クラブ』に思い切って舵を切るべきだと思います。コンサドーレに限らず、多くのクラブが地元出身選手にこだわり、育てていることだと思います。その流れこそが、地元民の選手愛を深め、ひいてはJリーグの裾野を広げ、Jリーグ全体の発展につながると私は信じています。
FC岐阜、腰を据えて来シーズンは戦ってください。もう失うものは何もありません。『オール岐阜体制で、我が子のようにFC岐阜を支える!』。これが、サポーター、スポンサー、岐阜県民の総意だと思います。J1を狙えるクラブとなってJ2に帰ってきてください。
待ってます!
【Profile】
恩田聖敬(おんだ・さとし)
1978年生まれ。岐阜県出身。京都大学大学院航空宇宙工学専攻修了。新卒入社した上場企業で、現場叩き上げで5年で取締役に就任。その経験を経て、Jリーグ・FC岐阜の社長に史上最年少の35歳で就任。現場主義を掲げ、チーム再建に尽力。就任と同時期にALS(筋萎縮性側策硬化症)を発症。2015年末、病状の進行により職務遂行困難となり、やむなく社長を辞任。翌年、『ALSでも自分らしく生きる』をモットーに、ブログを開設して、クラウドファンディングで創業資金を募り、(株)まんまる笑店を設立。講演、研修、執筆等を全国で行なう。著書に『2人の障がい者社長が語る絶望への処方箋』。2018年8月に、気管切開をして人工呼吸器ユーザーとなる。私生活では2児の父。
※ALS(筋萎縮性側索硬化症)とは、手足・のど・舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉がだんだん痩せて、力がなくなっていく病気。 最終的には自発呼吸ができなくなり、人工呼吸器をつけないと死に至る。 筋肉そのものの病気ではなく、筋肉を動かし、運動をつかさどる神経が障害を受け、脳からの命令が伝わらなくなることにより、力が弱くなり筋肉が痩せていく。その一方で、体の感覚や知能、視力や聴力、内臓機能などはすべて保たれることが普通。発症は10万人に1人か2人と言われており、現代の医学でも原因は究明できず、効果的な治療法は確立されていない。日本には現在約9000人の患者がいると言われている。
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