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退場で数的不利でもあきらめずに走る。
「湘南スタイル」の真髄を見た (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by Getty Images

 持ち前の走力でなんとカバーしていたものの、素早い横の揺さぶりに対応することは難しい状況だった。58分の失点場面も、レオ・シルバのサイドチェンジに翻弄され、逆サイドでフリーになった安西に決められたものだった。

 数的不利の状況下で、先制されてしまっては、もはや勝機はなしに等しい。考えられるシナリオは、バランスを崩して前に出るも、逆襲を食らって失点を重ねる展開だ。実際に湘南は、そうなりかけてもおかしくはなかった。

 しかし、曺貴裁(チョウ・キジェ)監督の巧みな采配が、嫌な流れを断ち切った。選手交代やシステム変更でバランスを整えると、残り15分、逆襲ムードは一気に高まった。

「10人になったので、相手にボールを持たれる時間が長くなってしまったのはしょうがない部分もあった。ただ、10人になっても、前に当てて出ていくとか、しっかりボールを動かして相手の嫌なことをすることはできていたと思う」

 若きボランチ、齊藤未月は数的不利の状況下でもやりたいことはできたと振り返る。

 逃げ切り体制に入った鹿島に対し、終盤に再びプレー強度を高めた湘南は、高い位置でボールを奪い、素早く縦に入れ、連動しながらバイタルエリアに侵入していく。数的不利に陥りながらも、立ち上がりの勢いを再び取り戻したのだ。

 もっとも、その逆境のメンタリティは称えられるものだったが、最後の精度が足りなかった。

「パスがずれたり、最後の精度は鹿島のほうが上だったのかなと思います」と齊藤が振り返れば、「決め切れるか、決め切れないか。強いチームなら追いついていたと思う。あそこで決めきるチームになっていかないといけない」と、左SBの杉岡大暉も唇をかみしめた。

 それが、湘南の抱える大テーマだろう。いい形を生み出しながら、最後の場面を崩し切れずに対応されてしまう。もし前線に圧倒的な個の力があれば、と感じる場面は少なくなかった。

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