浦和レッズと現実主義者オリヴェイラ。「とにかく勝つ」で思惑が一致 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 川崎Fは終盤、途中交代の齋藤学が左サイドから浦和の守備を攪乱。ようやく最終ラインにズレを生じさせ、家長昭博が際どいシュートを放つ場面もあった。しかし連戦で動きが鈍いこともあって、終始ボールを回しながらも、最後までゴールは遠かった。

 浦和は実務的に戦って連敗を止め、0-2の勝利を収めている。

 オリヴェイラ監督は2007年から鹿島アントラーズでJリーグ3連覇という偉業を成し遂げ、その采配は名前をもじって「オズの魔法使い」などと賞賛された。しかし、魔法という"まやかし"は似合わない。初日から選手の顔、名前を覚え、力量や特徴を知り、講演会のような長いミーティングでサッカーの熱を伝える。勝利を目的として逆算し、「選手の力を絞り出す」監督だろう。勝てる勝負に必ず勝つ。戦う前に勝っているというべきか。

 川崎F戦で浦和は、まずはゴール前の守備を厚くしている。全員が1対1の意識を高めつつ、相手を引き込むだけ引き込み、裏に空いたスペースを迅速に有効に使った。リスクが少なく、論理的で効率的。攻撃も、守備も、ゴール前での攻防でアドバンテージを大いに見せつけた。

<勝利を追求した、現実主義者のサッカー>

 その戦い方は案外、常勝を求められる浦和というチームに馴染むのではないか。試合後のミックスゾーンで、選手たちの表情は晴れやかだった。

「この勝利が、今後の(戦いに)落ち着きと勇気を与えるでしょう。選手たちはそれぞれの役割を、自信を持って遂行できるか。まずはメンタルがよくないといいプレーにつながりません」

 オリヴェイラ監督は、諭(さと)すように静かに語っている。

◆C・ロナウド不発もレアル勝利。W杯では拝めないクラブサッカーの真髄>>>

◆最下位にあえぐグランパス。「改革の痛み」にどこまで耐えられるか>>>

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る