J2京都に恐怖の「魔神」がいた。降格圏に沈むチームを10分で救う (3ページ目)
「代わって入った闘莉王は、キープ力と高さを使って、うまく(チームと)リンクしてくれました。やっぱりモノが違う選手で、これまで先発として使ってきましたが、今日のような使い方もあるなと」(京都・布部陽功監督)
闘莉王が前線に入ると、にわかに水戸の選手が慌て出した。それは日本代表としてワールドカップなど国際大会を戦ってきた百戦錬磨の猛者(もさ)が発する威圧感によるものなのか。その混乱に京都は乗じた。
81分、左CKを闘莉王がファーポストで競ると、もつれた相手のクリアは中途半端になる。これを、エリア外にいた重廣卓也が左足ボレーで蹴り込んだ。そして90分には、GKからのロングボールを前線にいた闘莉王が体を投げ出して収め、右サイドに展開。これを受けた岩崎悠人が中に鋭いクロスを入れると、小屋松知哉のシュートはヒットせずに逸れたが、そのこぼれ球を重廣が再び押し込んだ。
闘莉王はわずか10分で、試合を1-2とひっくり返してしまった。アディショナルタイムに入ると、最終ラインにポジション変更。今度はパワープレーを仕掛けてくる相手の攻撃を、ことごとく跳ね返した。
闘莉王のプレーは全盛期には程遠い。慢性的な筋肉系の故障も抱えている。しかし、たとえ50%の状態でも、J2では突出した選手だ。
「闘莉王は劇薬。使い方次第のところはある」
京都の関係者はそう洩らしたが、まさに魔神だろう。相手を畏怖させ、チームを勝利に導く。一方で実力があまりに突出しているだけに、味方をも萎縮させることがある。闘莉王自身、「なぜこんなプレーができないんだ?」という苛立ちを味方選手に常に抱えているに違いない。諸刃の剣とも言える。
「魔神」闘莉王というカードをどう使うのか――。そこに京都の浮沈は託されている。
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