高円宮杯U-18リーグとバレロンに想う「サッカーは人生そのもの」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 西村尚己/アフロスポーツ●写真photo by AFLO SPORTS

 一方の矢板中央は、最後まで勝利への執念を見せていた。露骨な時間稼ぎも敢行。何より球際に対する意識が最後まで衰えなかった。1対1で負けないことにより、戦いを旋回させていた。

 育成について、考えさせられる展開だった。

 町のクラブがJクラブに挑む小説『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)を上梓した筆者は、勝負の際(きわ)を探る目的で、育成年代について様々な取材をしてきた。この日のF・マリノスの試合ともリンクするのは、伝説のアルゼンチンの名将、ルイス・セサル・メノッティの言葉だろうか。

「フットボールは人生そのもの」

 ピッチでは、理不尽、不条理な出来事が常に起こりえて、それに向き合わざるを得ない。勝利をすれば、視界が開けるような成長が望める。たとえ負けても、すべてを出し尽くしたなら、何かをつかめる。その繰り返しの中で、逞(たくま)しくならないといけない。立ち止まってはならず、才能を持っているだけでは成功できない。才能をアップデートさせる者が一番強いのだ。

 性格や適性を語られる場合もあるが、あまり関係ないだろう。スポーツ取材をしていると、「"いい人"は弱いから成功できない。他人を引きずり下ろすくらい貪欲でないとダメだ」という話をしばしば聞く。それもひとつの真理だろう。"いい人"を、ただのお人好しとするなら。しかし、"いい人"にも、他人や環境に流されない強い優しさがある人はいる。

 スペイン史上最高のファンタジスタのひとり、ファン・カルロス・バレロンは、筆者が取材した選手のなかでも、格別に"いい人"である。気さくで、笑顔を失わず、誰にでも気遣いができる。信仰心の強さもあるのだろうか。

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