名良橋晃がジョルジーニョから継ぎ、内田篤人に渡した「2」への思い
遺伝子 ~鹿島アントラーズ 絶対勝利の哲学~(8)
名良橋晃 後編
4月3日にACLグループリーグ突破を決めたものの、リーグ戦では苦しい戦いが続いている鹿島アントラーズ。4月7日には試合終了間際にゴールを許して、湘南ベルマーレに敗れた。そして4月11日のFC東京戦では先制点を決め、"試合の入り方"の悪さを改善できたかに見えたが、オウンゴールで同点に追いつかれると、後半には前半に負傷した山本修斗から代わった西大伍の左サイドを破られる形で逆転弾を決められる。その後もボールの失い方が悪く、カウンター攻撃でピンチも迎えたが、なんとか堪(こら)えた。しかし、ゴールを決めることもできずに、1-2で終了。2勝2分3敗の勝ち点8、13位に順位を落とした。
怒りが収まらないサポーターのことを想像するのは容易(たやす)く、試合後にゴール裏へ向かう選手たちの足は重そうに見えた。そんななか、真っ先にそこへ向かったのが西だった。試合後のミックスゾーン、記者の質問に応えることなく、足早に歩く選手たちのなかで、足を止めたのが西と土居聖真だった。
「みんな頑張っていました。今日は全部、僕の責任です」
西はそう試合を振り返る。そして、中2日で迎える次の試合までに大事なことを訊くと「あんまりこう、気持ちとか、そういう部分というのは、言ってこなかったんですけど。今はそういう部分が大事かなと思っています」と答えた。
内田篤人、遠藤康、安西幸輝、町田浩樹、レオシルバ、ペトロジュニオール、安部裕葵、そして、山本と数多くの戦線離脱者を抱えている。内田はチーム練習に合流したが、FC東京戦でベンチ入りした昌子源も復帰したばかりだ。
5月20日まで約1カ月間で10試合を戦わなければならない。文字通りの総力戦となるだろう。
「89分間よくても、ひとつのプレーで台無しになってしまう。でも、前を向いていくしかない。この現実から目をそらしてはいけない。今、全員がもがいている」
土居がチーム状況について話した。
結果を出せない苦しみのなかで、誰もが「気持ち」について語る。球際の強さ、カバーリング、フリーランニング......闘志を示し続けることの重要性を理解しているにも関わらず、それを表現できていない。疲労もあるだろうし、精神力だけでは打開できない壁なのかもしれない。
1 / 4