セレッソ大阪、ルヴァンカップ優勝。初の戴冠に至る「ふたつの伏線」

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 どちらが勝っても初優勝――。どこか新鮮で甘美な印象を与えるその顔合わせは、しかし裏を返せば、あまりに非情な巡り合わせだとも言えた。

 今季ルヴァンカップ決勝で顔を合わせたのは、セレッソ大阪川崎フロンターレ。Jリーグ誕生以降、何度も初タイトルを手にしかけながら、そのつど逃してきた"シルバーコレクター"の両クラブにとって、ルヴァンカップ初優勝であるとともに、クラブ史上初タイトルをかけた戦いでもあった。

 だが、それをなせるのは1クラブだけだ。

 つまり、いまだ無冠同士の対戦は、どちらかが待ち焦がれた栄光に浴する一方で、どちらかは残酷な仕打ちをまたしても受けることになる。

ルヴァンカップを制して、初のタイトルを手にしたセレッソ大阪ルヴァンカップを制して、初のタイトルを手にしたセレッソ大阪 はたして、悲劇の繰り返しに終止符を打ったのは、セレッソだった。尹晶煥(ユン・ジョンファン)監督がニッコリと笑みをたたえ、語る。

「(グループリーグから)1回も負けずに、ここまでこられるとは思っていなかった。すごいことをやった選手たちに『ありがとう。ご苦労さま』と言いたい」

 試合は開始早々、動いた。

 左サイドからのスローインをFW柿谷曜一朗がヘディング。フワリと浮いたボールは、川崎のDFエドゥアルドがいち早く落下点に入り、難なく処理するはずだった。

 ところが、エドゥアルドが無造作に振った左足の脇をすり抜けたボールは、まるで計ったかのような絶好のパスとなって、FW杉本健勇の足もとへ。"タナボタ"でGKと1対1になった杉本はこのチャンスを落ち着いて決め、セレッソが先制点を奪った。

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