2016.07.19

「禁断の移籍」組が熱戦を点火。
5万人を黙らせた、さいたまダービー

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 そのとき、スタンドのオレンジ色の一角から、大きなブーイングが響き渡った。57分、浦和レッズの交代を告げるボードに掲示されたのは、「16」と「21」の数字――。ともにかつて大宮アルディージャでプレーした、MF青木拓矢とFWズラタンの番号である。

試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、選手は次々とピッチに倒れ込んだ まるで大宮サポーターを挑発するかのようなペトロヴィッチ監督の采配は、しかし少し退屈だったダービーマッチの潮目を変える重要な一手となったのは間違いなかった。

「ダービー」と謳(うた)われる試合は日本全国数あれど、現在のJ1で同じ街をホームタウンとするチーム同士が相まみえるのは、この「さいたまダービー」しかない。ともに2ndステージに入り、好調を維持していることもあっただろう。この日、埼玉スタジアム2002には5万3951人の大観衆が詰めかけていた。

  広島ほどではないにせよ、浦和には大宮との間に移籍にまつわる因縁がある。青木とズラタンが「禁断の移籍」の象徴で、さらには、この日は出場機会のなかったFW石原直樹も、広島を経由する前は大宮に所属していた。一方で大宮の守護神であるGK加藤順大は、2014年まで浦和でプレー。もっとも主力級を引き抜いた浦和とは異なり、加藤の場合は西川周作の加入により押し出されたかっこうである。にもかかわらず、ゴールキックのたびに浦和サポーターからけたたましいブーイングを浴びせられてしまうのだから、加藤に対して同情せずにはいられなかった。