「禁断の移籍」組が熱戦を点火。5万人を黙らせた、さいたまダービー (3ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 そんな展開のなかで下された、ペトロヴィッチ監督の大胆な「2枚切り」。それが試合を揺さぶった。2分後、ピッチに立ったばかりの青木を起点に右サイドを崩し、MF関根貴大のクロスをMF武藤雄樹が頭で合わせ、浦和が勝ち越しゴールを奪取。そしてこの得点が、真のダービーマッチの幕開けを告げる"号砲"となったのだ。

 青木の果敢なパスカットが浦和の推進力を高め、後半に入り突如覚醒した関根は相手をあざ笑うかのように果敢にドリブルで仕掛けていく。青木の投入によりシャドーへとポジションを上げた柏木は、よりゴール近くのエリアで危険度を高めた。

 半面、この積極性が浦和のバランスを崩したのも否めなかった。前線と最終ラインの距離感が遠くなり、いわば「間延びした状態」に陥ってしまったのだ。この時間帯をCBの槙野智章は振り返る。

「前から行くときと、行かないときのメリハリが必要だった。ボールの取られ方の問題もある。攻撃のスイッチを入れるところで奪われてしまうことも結構あった。試合を落ち着かせるために、後ろで回す時間も必要だった」

 大宮の同点弾は、そんな間延びした浦和の中盤のスペースを突いて生まれたものだ。本来そこにいるはずのMF宇賀神友弥が、直前の接触プレーで動けなくなっていたアクシデントもあったのだが、その隙を大宮は見逃さなかった。

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