前年16位アビスパ福岡をJ1へ。選手も感服する「井原イズム」 (2ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • photo by AFLO

 それだけではない。J1昇格がかかった大一番を迎えるにあたり、福岡はあらゆる状況を想定してきた。かかるものが大きいからこそ、不測の事態を迎えたときの動揺も大きくなりがちだが、指揮官の備えに抜かりはなかった。井原正巳監督が語る。

「今週の練習でビハインド(相手にリードされた状況)の想定もしていた。練習で準備したことを慌てずにやれた」

 3-4-2-1の福岡は、1点ビハインドで迎えた後半39分、DFを一枚削ってFW中原貴之を投入。FWウェリントンとの2トップにし、同じく交代投入したFW坂田大輔を2トップの下に置く形で前線を厚くした。

 すると42分、狙いどおりにロングボールを中原が頭で落とし、坂田が拾って左サイドへ展開。MF金森健志、MF亀川諒史とつないでゴール前にクロスが入ると、最後は右サイドから走り込んできたMF中村北斗が、「すごいゴールだった」と自画自賛する強烈なシュートをゴール左サイドネット上に叩き込んだ。

 周到な準備に裏付けられた鮮やかな同点ゴールは、すなわち、劇的な"決勝ゴール"だった。

 DF濱田水輝は感服したように語る。

「監督からは、常に『いい準備をしろ』と言われている。『やれることを全部やったら結果はついてくる』と。監督は、相手のよさを消しながら自分たちのよさを出すために、細かいところまで準備する。今日も負けている展開でも想定できていた。さすが監督。今日(引き分けたの)は監督の力だった」

2 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る