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【欧州サッカー】ニコラ・アネルカは不器用だけど誠実 ベンゲルは「不機嫌な男」の本質を見抜いていた

  • 粕谷秀樹●取材・文 text by Hideki Kasuya

世界に魔法をかけたフットボール・ヒーローズ
【第53回】ニコラ・アネルカ(フランス)

 サッカーシーンには突如として、たったひとつのプレーでファンの心を鷲掴みにする選手が現れる。選ばれし者にしかできない「魔法をかけた」瞬間だ。世界を魅了した古今東西のフットボール・ヒーローたちを、『ワールドサッカーダイジェスト』初代編集長の粕谷秀樹氏が紹介する。

 第53回は「フランスが生んだFWの最高傑作」と評されたニコラ・アネルカを取り上げる。プロデビュー前から注目を集め、ビッグクラブ移籍後も結果を残したものの、彼の魅力は引退後もあまり世間に広まっていない。アネルカという選手は、どういう人物だったのか──。

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ニコラ・アネルカ/1979年3月14日生まれ、フランス・ル・シェネ出身 photo by AFLOニコラ・アネルカ/1979年3月14日生まれ、フランス・ル・シェネ出身 photo by AFLOこの記事に関連する写真を見る パリ・サンジェルマンに始まり、アーセナル、レアル・マドリード、リバプール、マンチェスター・シティ、チェルシー、ユベントスと、超一流クラブを渡り歩いた。移籍金の合計は推定1億3000万ユーロ(約203億円)。才能の証(あかし)といって差し支えない。

 ニコラ・アネルカである。

「私が指導したなかで最高のアタッカー」

 アーセナルの監督だったアーセン・ベンゲルも高く評価する。ただ、ひとつのクラブに落ちつこうとしないアネルカの信用度はイマイチで、サポーターの間でも人気は薄かった。

「あの男はクラブに忠誠を誓わない」

 のちにアネルカは「いろいろなクラブでプレーしたかった」と語っている。エージェントも顧客の希望に沿って動いていただけだが、契約交渉のたびにクラブと揉めていた印象が強い。

 ローマのフランチェスコ・トッティ、ミランのパオロ・マルディーニ、マンチェスター・ユナイテッドのライアン・ギグス、トッテナム・ホットスパーのレドリー・キング......。移籍せずに生涯を捧げた「ワンクラブマン」は、今でもサポーターに愛されている。

 アネルカの内向的な性格も、不人気に少なからず影響しただろう。ファンサービスも消極的で、アネルカが笑顔で写真撮影に応じたり、サインしたりするシーンはほとんどなかった。誰が言ったのか、「The Incredible Sulk(不機嫌な男)」という異名までつけられた。

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著者プロフィール

  • 粕谷秀樹

    粕谷秀樹 (かすや・ひでき)

    1958年、東京・下北沢生まれ。出版社勤務を経て、2001年、フリーランスに転身。プレミアリーグ、チャンピオンズリーグ、海外サッカー情報番組のコメンテイターを務めるとともに、コラム、エッセイも執筆。著書に『プレミアリーグ観戦レシピ』(東邦出版)、責任編集では「サッカーのある街」(ベースボールマガジン社)など多数。

【図】FIFAワールドカップ2026出場国 フォーメーション&メンバー

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