W杯への決意新たに。工藤壮人の結婚式で思ったこと (2ページ目)
4月5日に映画も公開された人気サッカー漫画『1/11(じゅういちぶんのいち)』の第7巻には、こんなエピソードがある。
主人公、安藤ソラと仁菜の結婚話が出るが、それを仁菜の父、篠森勇人が渋る。父は高校時代、駅伝に打ち込んでいたが、たすきを渡せず心に大きな傷を負った。スポーツ競技における失敗を実感し、"娘がプロサッカー選手という不安定な職業の男と一緒になったら、不幸を共有するに違いない"と危惧する。しかしソラのサッカーに対する向きあい方に触れ、自らの記憶も虚しいだけではなかったことに気付く......という物語だ。
これはフィクションではあるのだが、リアリティを感じさせるのは、"サッカー選手と所帯を持つのはリスクもある"という事実に基づいているからだろう。Jリーガーの選手生命は26~27歳までと言われる。サッカーひと筋の選手の多くは学歴も資格も乏しく、バイト経験すらないなど、社会生活に慣れていない。なんの記録も残せずスパイクを脱いだら、荒野に投げ捨てられるようなものだ。
プロサッカー選手には、華やかなイメージがある。
事実、世界のトッププレイヤーであるC・ロナウドやリオネル・メッシは年俸だけで約20億円、広告収入を含めると40億円以上を稼ぐ。日本人選手も海外クラブでプレイするトップ選手の年俸は約3億円。在籍選手の多いドイツ、ブンデスリーガのクラブでは、それとは別に1試合で勝利給300~400万円を手にすることもできる。Jリーグでもトップ選手は年俸1億円以上、J1のレギュラークラスの選手は3~4千万円は平均で稼いでいる。
人生バラ色に映る。
しかし、実力格差の出る社会だ。J1でも控え選手は、年俸480万円以上のプロA契約に至らないケースも少なくない。J2では「選手の人件費は年間1億円」というクラブもあり、登録選手を25人とすると、単純計算で平均年俸は400万円。さらにJ3とカテゴリーが下がると状況は厳しくなる。
そしてケガ一つで人生を棒に振ることもあり得る。
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