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「日本のシャビ」田口泰士(名古屋)の可能性 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 中西祐介/アフロスポーツ●写真

 シャビは知性的選手の代表格である。自分、敵、味方、ボール、スペースを常に把握し、無数の選択肢の中から最善のプレイを選べる。単純な力や速さに限界はあるが、知性には限界がない。大きくも速くも強靱でもないシャビが「世界最高の選手」と尊ばれる、本当の理由だ。

 田口には知性がある。フットボールプレイヤーを語るのに、これほどの可能性を指し示す言葉はない。

 田口は沖縄県、那覇市で生まれ育っている。

「なんくるないさ」

 サインに"メッセージを書いてください"と頼まれると、仕方なく彼はそう書くという。沖縄の言葉で、なんとかなるさ。仕方なく、というのは、「自分の字が綺麗ではない」と思っているからだ。自尊心と羞恥心。なんくるないさという言い回しが、なんでもいいさ、という投げやりな気持ちとはまったく違うことが分かる。

「沖縄はサッカーよりも野球の方が盛んなんですよ。県出身のJリーガーは(赤嶺)真吾さん(仙台)とか数えるほどしかいません。でも、能力のあるサッカー選手は結構いると思うんですよね」

 沖縄について話すときの彼は闊達だ。

 物心ついたときから、ボールを蹴るのが好きだった。毎週末に衛星放送で流れる、レアル・マドリードの試合に釘付け。「裏に抜ける動きが最高!」と、エースFW、ラウル・ゴンサレスのプレイに夢中になった。小4の頃、サッカーの大会で右肘の骨にひびが入ってしまい、家で安静に横たわっていたときのこと。別室でテレビを見ていた親が「ラウルがゴールしたぞ!」と教えるものだから、喜びに我を忘れてひじを突いて飛び起き、痛い目を見た。

 正真正銘のサッカー小僧だった。

 U‐12日本代表に選ばれ、その後はU‐13,U‐14と各年代の代表選手としてキャリアをアップさせている。U‐15代表では2006年フランコ・ガッリーニ国際大会に参加し、ユベントスを相手に2得点するなどして優勝し、大会MVPに輝いた。U‐18ではUAEで開催された大会に参加し、U‐18ドイツ代表を相手に得点。U‐19日本代表では、宇佐美貴史、杉本健勇らとアメリカ遠征のメンバーに選ばれている。

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