【Jリーグ】シミュレーション「もしもラウルがFC東京に入団したら......」 (2ページ目)

  • 中山 淳●文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by Bongarts/Getty Images

 しかも、その中身が濃密だ。まず、レアル・マドリードで過ごした16年間に残した記録は、公式戦741試合出場、323ゴール。通算ゴール数はレアル・マドリード史上最高記録として刻まれている。また、内田とともに2シーズンに渡ってプレイしたシャルケ時代も含めると、チャンピオンズリーグで通算71ゴールをマークし、これは同大会の最多記録となる(2位はメッシの56ゴール※1月24日現在)。

 リーガ・エスパニョーラだけの成績を見ても、出場550試合はリーガ歴代2位(1位はバルセロナやバレンシアで活躍した名GKのアンドニ・スビサレータの622試合)。228ゴールは歴代1位だ(2位はメッシの198ゴール※1月24日現在)。

 ラウルが代表から離れた直後にスペイン代表の黄金時代が到来したことは不運だったが、レアル・マドリードやシャルケで数々のタイトルを獲得するなど、近代サッカー史で最も成功を収めたストライカーであることは間違いない。

 もっとも、ラウルの凄さはゴール記録だけではない。人間性が素晴らしく、常に周りから尊敬される存在なのだ。最大の理由は、その徹底したプロフェッショナリズムにある。

 例えば、毎日の練習はもちろん、遠征先でも時間は厳守。遅刻とは無縁だ。練習に臨む姿勢もプロそのもので、手抜きは一切ない。デビュー以来、ほとんど大きな故障をしたことがないのは、こうした自己管理を徹底し続けたことの証だ。

 また、並外れたリーダーシップの持ち主で、長きに渡ってレアル・マドリードとスペイン代表のキャプテンを務めた実績を持つ。特にレアル・マドリードでは、ジダン、ベッカム、ロナウド、フィーゴら各国のスター選手を擁して「銀河系」と称されたチームまでもまとめ上げた。

 試合後、ラウルはいちばん最後にロッカールームを出て、最後にバスに乗る。それは、チーム内に何が起こっているのかをすべて把握するためであり、キャプテンとして最後までメディア対応をしていたからだった。その責任感の強さは、辛口で知られるスペインのメディアから「一家の主のようだ」と称賛を浴びていたほどである。

 その姿を間近で見てきた内田も、「本当に素晴らしい選手。リスペクトしている」と、ラウルのサッカーに対する姿勢を事あるごとに称えてきた。そして、わずか2シーズンのプレイにもかかわらず、ラウルがつけた背番号「7」がシャルケの永久欠番になったことこそ、ラウルのパーソナリティーを物語るエピソードと言えるだろう。

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