【Jリーグ】大きな勝ち点3を手にした広島。優勝への準備は整った (2ページ目)

  • 原田大輔●文 text by Harada Daisuke
  • photo by Getty Images

 前半16分、後方でゆっくりとボールを回していた広島は、1本の縦パスによって攻撃のスイッチを入れる。中盤の底を務める森﨑和幸から双子の弟・浩司への縦パスだ。これを合図に、広島の選手たちはゴールに向かって動き出した。

 そして、パスを受けた森﨑浩は瞬時にこう判断した。
「縦パスを受けたとき、(髙萩)洋次郎とヒサ(佐藤寿人)の両方が見えた。洋次郎に出したほうがセーフティーだったけど、ヒサに出したほうが相手にとって危険だと思った」

 その森﨑浩からのパスを、佐藤は流れるような動きで前を向いて受けると、慌てて対応した相手DFに倒されてPKを奪取。これを森﨑浩が決めて早くも先制した。その後もアグレッシブに戦う広島は、31分、今度は青山が前線の佐藤へ縦パスを通す。浮き球のスルーパスに佐藤は素早く反応すると、ダイレクトで左足を振り抜いてゴール右隅に2点目を追加した。

 さらに後半も、CKから水本裕貴がヘディングシュートを決めて3-0と完勝。札幌の石崎監督が「個人としてもチームとしてもレベルが高かった」と認めたように、広島は首位らしく、結果以上に内容でも札幌を圧倒し、格の違いを見せつけた。

 最大の勝因は、広島の攻撃の生命線である縦パスだった。1点目も2点目も、前線の佐藤への縦パスが得点につながった。そして、彼らが勝てなかった10月の3試合から学び、この試合で取り戻そうとしていたテーマはアグレッシブさであり、得点に至った2本の縦パスはまさにその象徴だった。

「ここ何試合か、チーム全体としてアグレッシブさがなかったので、そこを出さなければと全員が意識していた」
 と佐藤が言えば、森﨑和もそれに同意してこう語る。
「ここ数試合、アグレッシブさに欠けていた。2シャドーとヒサに対してくさびのパスを入れられれば分厚い攻撃ができる。10月の3試合ではそこを警戒されたけど、それでもくさびを入れていく勇気というのが必要で、今日の試合ではそれができた。首位らしいというか、自分たちがやってきたサッカーが出せた」

 シーズン終盤にきてなお、広島はチームとして成長している。指揮官の森保一監督もそれを実感している。
「選手にはかなりの重圧がかかっていたはず。そのプレッシャーをはね除け、準備してきたことをよく発揮し、躍動してくれた。技術、戦術も大切だけど、何より精神的なタフさを身につけ、成長してくれた。シーズン開幕時から比べたら、すごく成長していると思う」

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