【Jリーグ】30歳になった佐藤寿人の得点王独走にはワケがある (3ページ目)
福田氏の指摘どおり、佐藤は30歳になった今、自身の新たなる可能性を感じながらプレイしている。
「試合中に相手に合わせてポジショニングを変えてみたり、身体の向きを少し変えてみたり微修正している。それは経験から来るもの。ストライカーはよく本能でプレイしていると言われるけど、僕はそうじゃない。30歳になってプレイの選択肢はどんどん増えている。その前のプレイでこうしたから、次はこうしようとか、引き出しがたくさんある。常に次のプレイを考えて準備をして、状況を判断して瞬時にそれを選んでいる。だから、試合後にどういうゴールだったか説明できるし、僕のゴールに偶然というものは存在しない」
ストライカーだった福田氏が佐藤のプレイを裏付ける。
「ゴールに対してのこだわりをしっかり持っているから、いつもゴールを意識したプレイができる。何より、自分の良さ、自分の生かし方をよく知っている。きっと佐藤選手は、普段からそれを周囲に理解してもらうような努力をしていると思うんですよね」
佐藤もそれに同意する。
「常に要求はしています。サッカーは出し手と受け手の関係があって、判断するのはパサーなので、僕に出せないと思ったのならば、それは仕方がないですけど、まずは自分を見てほしいということは要求しています。そこは10回走って1、2本パスが出てくればいいかなって思っています」
佐藤とは同世代であり、ともに広島を支えるMF森﨑和幸は、佐藤のストライカーとしての資質をこう見ている。
「これまでいろいろなFWを見てきましたけど、ヒサ(寿人)はプレイをさぼることがない。試合中にたとえボールがこなくても、無駄な動きと言ったら言い方は悪いかもしれないけど、ゴール前に走り込むことをやめない。その連続性があるから、僕らはボールを持ったらまずヒサを見る。それに、シュートの質が高い。彼はこの場面でどこにシュートを蹴ればゴールが決まるかを知っている」
練習すればするだけ、試合を重ねれば重るだけ、プレイの選択肢は増えていく。9年連続でふた桁得点を記録しているストライカーは、30歳になった今なお、進化している。
J1、J2を含めたJリーグ通算得点は第18節を終えて159得点となった。佐藤は、コンサドーレ札幌の中山雅史の157得点を抜いて、日本人でトップに立った。その数字が何より、佐藤というストライカーの資質の高さを物語っている。
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