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【サッカー事件簿】ドイツワールドカップ、中田英寿がブラジル戦の前日に行なったシュート練習 「1本、1本に魂がこもっていた」 (3ページ目)

  • 佐藤俊●取材・文 text by Shun Sato

 だが、ワールドカップの舞台で世界王者のブラジル相手に、2点以上の差をつけて勝つことがどれほど難しいことか。それは、容易に理解できる。だからこそ、クロアチア戦後の選手たちの落胆ぶりは相当なものだった。

「クロアチア戦は勝てるチャンスがあったのに、ドローに終わったショックが大きかったです。まだグループリーグ敗退が決まったわけではなかったけど、(最終戦の)ブラジルに勝つのは難しい、というのは感じていましたから。

 コンフェデレーションズカップでは2-2で引き分けたけど、そのときのブラジルとは別モノ。ロナウドやジュニーニョ・ペルナンブカーノ、カカ、ロビーニョ、ロナウジーニョ、アドリアーノら強力なメンバーがそろっていたし、2002年日韓大会に続く連覇がかかっていたのでモチベーションも高かった。正直、勝てる可能性は低い。

 それでも、(1996年の)アトランタ五輪のときのように(日本が1-0で勝利)、やってみないとわからないところもある。とにかく、(自分は)気持ちを切り替えて、最終戦に備えようと思っていました」

 そんな川口の思いとは裏腹に、グループリーグ敗退がほぼ現実的なものとなり、チーム内には殺伐とした空気が流れていた。

 殺伐としていたのは、選手たちだけではない。日本代表を応援するためにドイツまでやってきた多くのサポーターやファンもそうだった。ベースキャンプまで赴いた彼らは、過去2戦の結果を受けて苛立ちを隠せない様子だった。

 最初は応援するわけでもなく、暗い沈黙が続いていたが、シュート練習が始まると、ため込んでいたものを爆発させた。選手がミスすると、「ちゃんと入れろよ!」と罵声が飛んだ。

「史上最強」と謳われながら、ひとつも勝てないまま終戦を迎えようとしている。その現実が我慢できなかったのだろう。日本代表への思い入れが深い分、尖った言葉になって、選手たちの背中を射貫いた。

「厳しい声が飛ぶのは仕方ないと思っていました。僕らの若い頃は、サポーターやファンからの罵声や怒号って、ふつうのことでしたからね。フランスワールドカップの最終予選のときとか、もうすごかったじゃないですか。試合の結果に一喜一憂し、負けたら『何やってんだ!』ってボロクソ言われて、殺気立っていましたよね。

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