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サッカー日本代表の歴史的勝利を喜ぶだけでは進歩なし 改善点が明確になったブラジル戦 (4ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

 ブラジル戦に臨んだ森保采配にも、当時のトルシエサッカーに通底するものを感じた。大敗を恐れたサッカーだ。前半のサッカーはまさにそれだった。後半はそこから前に出る作戦に変更したわけだが、選手交替を駆使しても、このサッカーを短期集中トーナメントで続けることは体力的に難しい。

 プレッシングは技量差を逆転する最大の武器である。ブラジル戦はそれが証明された一戦だった。そしてプレッシングは訓練すればするほど上達する。勤勉、忠実、真面目という日本人の気質にも合っている。そこで選択する布陣がなぜ5バックなのか。理解に苦しむ。本心は後ろで守りたいからではないかと疑いたくなる。これまでの経緯を見れば、それはごく自然な感想になる。

 攻撃的サッカーの代名詞であるプレッシングを、守備的サッカーの代名詞である5バックで実践しようとする森保サッカーの矛盾が露呈した一戦。このブラジル戦を歴史的勝利と喜ぶだけでは進歩はない。むしろ日本の改善点が明確になった試合。筆者にはそう映る。

著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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