サッカー日本代表の歴史的勝利を喜ぶだけでは進歩なし 改善点が明確になったブラジル戦 (2ページ目)
【プレッシングに適さない5バック】
日本はプレッシングを最大の拠り所にイケイケの状態になる。後半17分に中村敬斗が同点ゴールを挙げれば、26分には上田綺世が逆転弾を決め、ブラジルから初めて白星をもぎ取ることに成功した。
試合後の会見で、森保一監督は「試合の入り方について指示を間違えた」と、穴熊作戦が失敗だったことを認めた。「最初から後半のようにプレッシングを積極的に掛けに出ていれば......」と。反省の弁を少なくとも3度、口にした。ブラジルに歴史的な勝利を飾ったにもかかわらず、なんと謙虚な姿勢だろうか。感心せずにはいられないと言いたいところだが、筆者には心底、反省しているのか、疑わしく映った。
後半、布陣を5バックから4バックに変えたのならわかる。しかし5バックのままでプレッシングに出た。フィールドプレーヤーの数は10人なので、高い位置からプレスを掛けるその実働部隊は5人になる。6人いる計算になる4バックよりひとり分、数が少ないことを意味する。たかがひとり分、されどひとり分だ。労働力はひとりあたり20%ほど増す計算になる。
攻守が切り替わった瞬間、4バックと5バックでは高い位置から相手ボール奪取に参加できる人数に違いがあるのだ。当たり前の話だが、4バックのほうが5バックより攻撃的。プレッシングに適した布陣だとされる理由だ。
プレッシングに適さない守備的な布陣(5バック)でプレッシングを掛けに行けば、選手が疲弊するのは時間の問題だ。この設定で森保監督の反省どおり、試合開始直後からプレッシングに出ていたら、日本選手の体力は終盤までもっていないだろう。反省を怪しみたくなる理由である。
前にも述べたことだが、選手交替枠が5人に増えたことで、いくぶん誤魔化しは効くようになっている。交代枠6人で行なわれる親善試合はなおさらだ。しかし選手は所属クラブからの借り物だ。選手に負担増の設定を強要すれば、クラブは快く思わないだろう。選手そのもののコンディションにも影響が及ぶ。選手への非論理的な負担は、代表監督の身勝手な振る舞いと言われても仕方がないのだ。
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