検索

サッカー日本代表の歴史的勝利を喜ぶだけでは進歩なし 改善点が明確になったブラジル戦 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【大敗を恐れた前半のサッカー】

 ワールドカップで優勝するには全8試合を戦うことになる。コンディションがカギとなる中で、5バックでプレッシングに出ることは無謀。文字どおり非効率的な作戦となる。

 森保監督が本当に反省しているのなら、布陣を4バックに変えなくてはならない。4バックに変えたうえで逆転勝ちを収めたのなら、監督采配に拍手を送りたくなるが、そうでない。精神論、根性論を選手に強要した結果の勝利と言われても仕方がない。

 想起したのは加茂ジャパンだ。加茂周元日本代表監督は日本にプレッシングの概念を初めて持ち込んだ指導者として知られるが、採用した布陣は4-2-2-2だった。欧州では中盤フラット型4-4-2が定番とされるなかで、加茂元監督はブラジル式と言われた中盤ボックス型の4-2-2-2で「プレス!」と叫んだ。両サイドバックと2列目の選手は、後半20分を過ぎるとパタッと足が止まった。

「プレス」と叫ぶ前に設定を見直すべき。筆者は当時、幾度となく指摘したものだが、メンバーのなかには選手時代の森保監督もいた。それから30年経ったいま、采配を振る森保監督が加茂元監督と同様の症状に陥る姿を見せられると、欧州との距離の遠さをあらためて痛感させられる。

 前半、5-4-1でひたすら守りを固める姿を見せられた時、ひどく残念な気分に襲われたものだ。チャレンジする姿勢は皆無に映った。

 思い起こされるのは2001年の春に行なわれたフランス戦とスペイン戦だ。

 フランスに0-5で敗れると、当時の日本代表監督フィリップ・トルシエは、続くスペイン戦にフラット3ならぬフラット5の作戦で臨み、0-1で敗れた。試合後、トルシエは「もう少し攻撃的精神を持って臨めば......」と口にしたが、筆者にはそれがひどく嘘臭く聞こえた。5バックで後ろを固めておいて、どうやって攻撃的に臨むのか、見えてこなかったからだ。フランス戦に続く大敗を恐れたサッカー、解任を免れようとしたサッカーだった。

3 / 4

キーワード

このページのトップに戻る