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サッカー日本代表はなぜゴールを奪えなかったのか 佐藤寿人「守備ブロックを動かす作業は9番の仕事ではない」 (3ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei

【どこまで上田に迫っていけるか】

 本来、ブロックを動かしてギャップを生み出す作業は、ユニットで目線を揃えていくべきです。しかし、連係を構築する時間がなかった以上は、個々の力でやっていくしかない。アバウトなボールに反応して(相手DFラインを)裏返すシーンもありましたけど、なかなかオーストラリアのブロックが崩れなかった。そのために、ゴールに向かってプレーするシーンはそれほど多く訪れませんでした。

 これは大橋個人の問題ではなく、チームとしてゴールへの道筋を作ることができなかったということ。その意味では、この1試合で大橋を評価することは難しいと思います。

 大橋に代わってピッチに立った町野修斗(ホルシュタイン・キール)も含め、ボールを呼び込むことができなかったのは、やはり「急造チーム」だったことに起因するでしょう。

 森保監督はこれまで、上田綺世(フェイエノールト)をこのチームのFWの軸に置いてきました。なぜ彼が重宝されているか──それは、もちろん得点を取ることが一番のタスクですが、必ずしもそれが絶対ではない、ということです。

 たとえば、相手の最終ラインを押し下げる作業であったり、ボールを収めることもそう。2列目と関わりながら、安定してボールを前に運んでいく部分で、動き出しと収める能力をかなり求められていると思います。

 森保ジャパンの立ち上げ(2018年7月)から振り返ると、当初は大迫勇也(ヴィッセル神戸)がその役割を担っていて、それは上田に継承されていきました。

 上田は決してポストプレーヤーではないですが、9番の能力をオールラウンドに備えていますし、守備のスイッチの入れ方やセットプレーの守備でも重要な存在です。それらをトータルで考えれば、今の代表のなかでは抜きん出た存在だと思います。

 ただ、大橋にしても町野にしても、今回は呼ばれていませんが小川航基(NECナイメヘン)にしても、上田に共通した能力を持っていると思います。チームのためにハードワークできますし、ユニホームを汚すことをいとわない選手たちですから。ワールドカップまでの1年で、どこまで上田に迫っていけるか──。ヨーロッパで研鑽を積む彼らの成長に期待したいですね。

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