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なでしこW杯優勝メンバー、近賀ゆかりが最後の地・広島に残したもの「私が私じゃない...でもそれがここに来た理由なんだ」

  • 早草紀子●文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

近賀ゆかり引退インタビュー 前編

(後編:近賀ゆかりにとってなでしこジャパンは「目指す場所じゃなくて、居たい場所だった」>>

 またひとり、女子サッカー界のレジェンドがスパイクを脱いだ。2011年ドイツワールドカップを制した21人のひとり、近賀ゆかりのラストシーズンは波乱含みではあったが、彼女らしさが満載だった。最後の所属チームとなったサンフレッチェ広島レジーナには、キャリアのすべてを注いだ。ホーム最終戦では新スタジアムに集った10000人以上の観客のみならず、ともに世界を戦ったなでしこジャパンのメンバーも終結し、近賀の最後の勇姿を見届けた。

 そこでは叶わなかったゴールも最終節ではアウェイの新潟の地でしっかり決めた。背負い込みすぎず、自然体でありながら熱くサッカーと向き合ってきた。女子サッカー界から深く愛された近賀のサッカー人生を彼女とともに振り返る――。

エディオンピースウイング広島で、サッカー人生を振り返った近賀ゆかりエディオンピースウイング広島で、サッカー人生を振り返った近賀ゆかりこの記事に関連する写真を見る

【旧友と戦ったラストマッチ】

――ホーム最終戦では叶いませんでしたが、最終戦で納めのゴールを決めるとは、やはり持っている側の人、でしたね。

近賀ゆかり(以下、近賀)(ゴールが)決まった瞬間は、「えっ?」って感じでしたけど、ラッキーでした。藤生(菜摘)がシュート打つっていうのはもう雰囲気としてあって、あの角度でバシっとはなかなか決まらないだろうからこぼれてくるだろうな、と。ただ、ホントにたまたまで(笑)。

――相手のアルビレックス新潟レディースには、なでしこジャパンでともに戦った有吉佐織選手、川澄奈穂美選手、上尾野辺めぐみ選手がいました。ラストマッチはいかがでしたか?

近賀 最後が新潟というのは本当に運命ですよね。幸せでした。対峙しているんですけど、同じピッチのなかにいるので懐かしい感じがするんです。"一緒にプレーする"ことに変わりはないから。向こうも最終戦でセレモニーもあるなか、最後に花束もいただいちゃって、さらにみなさんに胴上げまでしてもらって......幸せ者です。

――タイミング的にも選手側からの発信でないとアウェイであそこまで色々できないですよね。あれを計画したのはきっと......?

近賀 川澄でしょう。指示を出している絵が浮かびますよね(笑)。そういう仲間に見守られながらの試合で力を出し尽くしました。最後の瞬間はそんなに「引退!」みたいな感情じゃなく、いつもの1試合で全力を尽くした感覚でしたね。目標にしていた3位に届かなかったのは悔しかったです。だけど......引退の実感がないんですよ。今もまだ(笑)。

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