サッカー日本代表はワールドカップにどう臨むつもりか 久保建英に救われたバーレーン戦
サッカーを観戦する時、なにより集中して目を凝らすべきは立ち上がりの5分になる。ピッチ上に両軍が交わり、フィールドプレーヤーがひととおりボールに触れた瞬間、見えてくるものがある。
接戦か一方的か、順当か番狂わせが起きそうか、などと展開が読める場合がある。下馬評やこれまでの戦いなど、頭に整理されてある事前情報と、眼前の光景をつけ合わせた時に襲われる違和感と言ってもいい。巷に試合のオッズ情報が溢れている欧州などで試合を観戦した時は、とりわけだ。強者と弱者、両者の関係が鮮明な時ほど、現実とのギャップに目が留まる。
日本対バーレーン。イメージが残るのはマナマで行なわれた第1戦だ。W杯アジア3次予選の2試合目に当たる一戦である。結果は5-0。中国戦(7-0)に続いて華々しく大勝を飾ったことで日本は勢いづき、グループCで独走状態を築くことになった。
その印象を残しながら、埼玉スタジアムのスタンドからピッチに目を落とせば、日本に5-0の勢いがないことは鮮明だった。勢いを感じたのはバーレーン側。閃いたのは「苦戦」の二文字だった。開始5分は、競馬で言えば出走馬の状態を確かめるパドックに相当する。気合い乗りやコンディションを確認するならば、状態がいいのは明らかにバーレーンのほうだった。
具体的には、バーレーンのほうが前から来た。高い位置から日本の選手とボールを追いかけた。ひと泡吹かせようと活気を漲らせている様子がひしひしと伝わってきた。
5バックの態勢で後方に多くの人数を割き、前方へ圧力を掛けられずにいる日本と比較すれば、ピッチ上に描かれるデザインに著しい開きが生じていた。ホームの強者が引き、アウェーの弱者が前から行く展開に、ネガティブな感情を覚えるのは当然だった。受けるように構える日本に、W杯本大会に臨むチャレンジャー精神を見て取ることは難しかった。
試合後のセレモニーで笑顔を見せる日本代表の選手たちphoto by Kazuhito Yamada/Kaz Photographyこの記事に関連する写真を見る 世界でオセアニアの次にレベルが低いとされるアジアでは強者で通るが、W杯本大会の場に出るとせいぜいダークホースだろう。今季のチャンピオンズリーグ(CL)で16強に残ったチームの選手数を国別で比較すれば、日本(3人)はエクアドル、デンマーク、韓国、ギリシャ、ナイジェリアらと並び23位タイという序列になる。グループリーグを戦った選手の数は11人。日本サッカーの過去と比較すれば最多だが、他国と比較すると胸を張れる状況にない。つまり、アジア予選と本大会とでは立ち位置は一変する。
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著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。