サッカー日本代表に今回も鈴木優磨は招集されず 森保一監督に求めたいもうひとつの「努力」 (3ページ目)
【代表キャップを安売りすべきではないが...】
シント・トロイデンで2シーズンと少しプレーしたことがある元欧州組でもあるが、Jリーガーのイメージが強いことは確かだ。エアポケットに陥っているのか。選びそびれてしまった選手の代表格に見えてしかたがない。時の代表監督は、この手の実力者を代表キャップゼロのまま放置してはいけない。
今季、鬼木達監督に代わった鹿島はいいサッカーをしている。ここ数年のなかでは一番いい状態にある。鈴木の調子も相変わらず上々だ。常にワンランク上のプレーを披露している。旬な選手。選ぶタイミングとしても悪くなかった。
代表キャップは安売りするべきものではない。しかし引退後、元日本代表という肩書きがあるか否かは重要な問題になる。森保監督自身がそれを一番痛感しているはずだ。無名だった選手・森保一がハンス・オフトにより代表メンバーに抜擢された経緯は、筆者の脳裏に鮮明だ。そこで代表キャップを得ていなければ、日本代表監督という現在の姿はない。肩書きが活きているのだ。
「本日の解説は元日本代表の○○さんです」と紹介されたほうが、通りはいいのである。選ばれてもおかしくない選手にキャップがついていない現実を、筆者は見過すことができない。ひとりでもハッピーな選手を増やす努力を、8年間も代表監督を務める森保監督は怠ってはならない。
繰り返すが、日本のおかれた予選の環境はどこよりも緩い。そして現在、日本は本大会出場をほぼ手中に収めた状態にある。日本サッカー界を円滑にするまたとない機会なのだ。そうした余裕こそが真の代表強化に繋がるのだと筆者は見る。となれば、選手からも尊敬される名監督になり得る。
弱者相手に毎度ベストメンバーを招集する生真面目な代表監督は、世界を見渡しても稀だ。ハードスケジュールのなかで欧州組を招集しても、不要と思えばまったく起用しない。そんな厳しさを前面に押し出すばかりが代表監督のあるべき姿ではないのである。
著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。
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