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サッカー日本代表をも揺さぶる欧州クラブ「出世レース」 遠藤航はリバプールを出るか

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

連載第24回
杉山茂樹の「看過できない」

 Jリーグにはヒエラルキーがない。発足して30年あまりが経過したが、常勝チーム、強豪チームは誕生していない。欧州サッカーとの一番の差はここにある。

 Jリーグにもそれなりにピラミッド社会は構築されているが、頂点は低い。横並びに近い形状だ。昨季、J1初昇格の町田ゼルビアが優勝争いをすることがその象徴。数年前まで2強を形成していた川崎フロンターレ、横浜F・マリノスが、Jリーグの中位をさまよう姿しかり。日本サッカーの特殊性を表わす事象になる。

 それは、欧州サッカーとの比較で一目瞭然になる。欧州でプレーする日本人は100人を超えると言われるが、それは日本人に限った話ではない。世界各国の選手も同様に、続々と欧州を目指す。欧州の懐の深さ、収容能力には恐れ入るばかりだ。欧州サッカーは人種のるつぼと化している。

 W杯本大会の"組替え戦"を見るかのようだとは、筆者が現地で抱いた感想だが、いまやW杯本大会で見かけない国の選手もゴロゴロいる。本大会どころか予選も行なわれているような状態である。

 ピラミッドの高さは自ずと上昇する。選手の夢も膨らむ。欧州はいっそう憧れの舞台となっている。頂上へとつながるこの上昇階段をどこまで昇ることができるか。

 欧州にはリーグランキングもあれば、クラブランキングもある。一目瞭然となるヒエラルキーが存在する。自分自身の立ち位置は鮮明になる。ランキングは選手としての「格」を表わす。

 代表歴、キャップ数は、欧州に渡る際の"箔"になる。品質証明書としての役割を果たす。だが現在では逆に、欧州で所属するクラブやリーグが、母国へ向けてのアピール材料になる。欧州でプレーする選手の格を推し量るうえで、もっともわかりやすいのがチャンピオンズリーグ(CL)への出場試合数だろう。価値あるデータになる。

 この欧州での出世レースは、代表選手の選考に大きな影響を及ぼす。サッカーは選手の個人データの活用が増えてきたとはいえ、良し悪しは個々の感覚に委ねられる。代表監督も例外ではない。だが、いくら好みから外れた選手でも、格付けされていると、監督としては選ばざるを得なくなる。逆に好みの選手でも、格に恵まれなければ、簡単に選べなくなる。

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著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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