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ブラジルW杯で青山敏弘が長谷部誠に指摘された「もっと落ち着いてプレーできるだろ」の意味 (4ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei

【佐藤寿人と森﨑兄弟に明かした胸の内】

 世界を知った青山は、その一方でメンタル的に追い込まれていた。2014年から広島のキャプテンに就任し、3連覇を目指すチームを牽引する役割が求められていたからだ。

「あの頃が一番きつかったかな。ワールドカップのプレッシャーがありながら、キャプテンとしてチームの表に出ない内部のこととか、いろいろやることが多くて、すごくきつかった。

 それをきついって言うのは、自分に力がないだけなんだけど、プレッシャーだったり、求められているものだったり、代表だったり、その緊張感のなかでやり続けるのはメンタル的にきつかった。逃れられないものが、やっぱりあったから」

 背中でチームを牽引するタイプの青山は、決して弱音を吐かず、すべてをひとりで背負ってしまうところがあった。ほかの誰かに頼ることなく、多くのものを抱え込んでしまっていたのだ。

 そんな青山に救いの言葉をかけたのは、森保監督だった。ある日、練習場まで行ったものの、一身上の都合ですぐに帰らなくてはいけないことがあった。

「練習の前に、森保さんには帰りますって言って。だけど、ほかの選手からすれば『なんでキャプテンがいないの?』ってなるじゃないですか。しかも、試合の前日でしたからね......」

 結局、次の日の試合には出場し、青山はゴールを奪う活躍を見せ、勝利に貢献した。しかし、周りに迷惑をかけ、不信感を抱かせてしまっていることが心苦しかった。

 そんな青山に、森保監督は言った。

「アオ、その苦しさは分け合っていいんだよ」

 キャプテンだからと言って、すべてを抱え込む必要はない。マインドを変えた青山は翌年のキャンプの時に、先輩の佐藤寿人と森﨑兄弟に胸の内を明かした。

「今、自分はこういう状態で、ちょっとできない時があると思うんで、そういう時は助けてくださいって。自分の弱いところを出したのは、その時が初めてでしたね。それがよかったんだと思います」

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