日本代表のミャンマー戦、シリア戦に望む新布陣 鎌田大地をトップ下に置く3-4-3

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

 日本代表のミャンマー戦、シリア戦は文字どおり消化試合だ。何かを試すには絶好の機会である。にもかかわらず森保一監督は、代わり映えのしないメンバーを選んだ。メンバー発表の会見の席上で、傍らに座る山本昌邦ナショナルチームダイレクターは「9月にはアジア最終予選が控えている」と危機感を煽ったが、8.5に広がったアジア枠で日本の落選をイメージすることはできない。実力と枠の関係でいえば、日本は世界で最も恵まれた国と言っても過言ではない。

ミャンマー戦に向けて調整する鎌田大地ら日本代表の選手たち photo by Kyodo newsミャンマー戦に向けて調整する鎌田大地ら日本代表の選手たち photo by Kyodo newsこの記事に関連する写真を見る 本来、泰然自若と構えるべきこの緩い2試合を、どう有効に使うか。筆者が注目したくなるのは布陣だ。新しい布陣をテストするには絶好の機会だと考える。どんな布陣をテストするのか。それは後に触れることにして、メンバー発表の記者会見における森保発言で、最も引っかかりを覚えたのは以下の台詞だった。

 U-23から抜擢された鈴木唯人の起用法について問われると「4-2-3-1ならトップ下、4-1-4-1ならインサイドハーフ、3-4-3ならシャドー」と答えたのだ。「攻撃的なポジションで」と述べた後、使用する布陣を引き合いに出し、具体的に説明したのだが、そのどこに引っかかったのか。

 3つの布陣の表記である。3番目の3-4-3だけが3列表記だ。シャドーというポジション名を具体的に使うならば、3-4-2-1と言ったほうが断然、わかりやすい。

 そもそも4バックのふたつ(4-2-3-1と4-1-4-1)は4列表記なのに、なぜ3バックは3列表記なのか。4-1-4-1は俗に4-3-3と表記される。そこはご丁寧に4分割にしておきながら、3-4-2-1は3-4-3に短縮する。

 3-4-3と3-4-2-1。

 この似て非なる布陣を一緒くたにするべきでないと突っ込みたくなる。そのどちらが攻撃的か。どちらが5バックになりやすい布陣か。答えはハッキリしている。3-4-3のほうが攻撃的で、3-4-2-1のほうが5バックになりやすい。それぞれの概念は180度異なる。このことは森保監督だって十二分にわかっているはず。なぜわざわざ、混乱を誘うような紛らわしい説明をするのか。

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プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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