谷口彰悟が感じた残念な現実 カタール2年目は「細部へのこだわりが最後に大きな差に」 (3ページ目)
【自分は絶対に試合に出ないといけなかった】
今シーズンを振り返った時、あそこで引き分けていれば、あそこで勝ち点2を失わなければと、思わずにはいられなかった。それはシーズンを通して見れば何十分の1試合であり、勝ち点1の違いかもしれないが、そうした細部へのこだわりがシーズンの最後の最後に大きな差となって表われることを、あらためて痛感した。
個人としては、シーズン開幕前のキャンプ時は監督変更による構想外とも捉えられる立ち位置から、プレーで監督を納得させ、評価を覆し、チームにとって必要不可欠な存在になれたことは、サッカー選手として今後を生きていくうえでも大きな経験、財産になった。
サッカーでは監督に決定権があり、判断は絶対であるため、指揮官の好みや裁量によって出場機会を得る、得られないなど状況は変わってくる。実際に技術が高くても、プレーがうまくても、出場機会を得られない選手はたくさん見てきた。
そうしたなかでも、自分の存在価値をアピールして、しっかりと見せていく。海外ではなおさらそのアピールが大事になるため、今季は序列を覆して試合に出続けられたことに対しては、自分自身に一定の評価をしている。
先発で試合に出続けることが当たり前ではない一方で、心境としては「自分は絶対に試合に出ないといけなかった」とも思っていた。
それは主観的にも、客観的にも、だ。
主観としては、周りと比較しても「自分のほうがやれる、できている」という自信があり、自分自身に言い聞かせてきたところもある。日々のトレーニングや試合でも、自分の力は証明してきただけに、僕を(試合で)起用しない選択肢はないだろうというところまで高めることができた。
そう思ってやってきただけに、自分としては当たり前のことを当たり前にやってきた結果でしかない。だから1年間、試合に出続けられたことに、特別な充実感や達成感を抱くことはなかった。
チームメイトとトレーニングをしていても、試合をしていても、絶対に自分がピッチにいなければ守備だけでなく、攻撃も機能しないという周りからの信頼を勝ち取れていたことだろう。これは決して自惚(うぬぼ)れや奢(おご)りではなく、周りの反応から客観的に感じられたことだった。
それくらいカタールで2年目となった今季は、チーム内でもリーダーシップを持ってピッチに立ってきたという誇りと自信を培うことができた。
◆第18回につづく>>
【profile】
谷口彰悟(たにぐち・しょうご)
1991年7月15日生まれ、熊本県熊本市出身。大津高→筑波大を経て2014年に川崎フロンターレに正式入団。高い守備能力でスタメンを奪取し、4度のリーグ優勝に貢献する。Jリーグベストイレブンにも4度選出。2015年6月のイラク戦で日本代表デビュー。カタールW杯スペイン戦では日本代表選手・最年長31歳139日でW杯初出場を果たす。2022年末、カタールのアル・ラーヤンSCに完全移籍。ポジション=DF。身長183cm、体重75kg。
著者プロフィール
原田大輔 (はらだ・だいすけ)
スポーツライター。1977年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌『ワールドサッカーグラフィック』の編集長を務めたのち独立。Jリーグを中心に取材し、各クラブのオフィシャルメディアにも寄稿している。主な著書に『愛されて、勝つ 川崎フロンターレ「365日まちクラブ」の作り方』(小学館クリエイティブ)など。
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