川澄奈穂美「女性が安心して働ける社会を」 理事抜擢の理由は「私は思ったことを言っちゃうタイプ」だから (3ページ目)

  • 戸塚 啓●取材・文 text by Totsuka Kei

【最下位なのにクラブが設備に投資した理由】

 15人の理事で、唯一の現役選手である。「そこは自分の強みにしたいと思っています」と話し、「女子サッカーの世界でずっと生きてきて、いろいろなものを見てきているので、何か伝えられるものがあれば伝えたいですね」と続けた。

「アルビに加入する前に所属したゴッサムは、男子のニューヨーク・レッドブルズとオーナーが同じで、練習施設は男子とアカデミーと同じ敷地内にあり、2023年には女子専用の建物が作られて、ミーティングやランチができるスペースが用意されました。

 それ以前もアカデミーの施設の一部を使っていて、自分たちのロッカールームやスタッフルームもありました。練習も天然芝のグラウンドでやっていました。設備に不自由はなかったんですが、クラブはさらに投資をしてくれたんです。しかも、2022年のシーズンは最下位だったにもかかわらず、です!」

川澄奈穂美はずっと日本女子サッカーを牽引してきた photo by AFLO川澄奈穂美はずっと日本女子サッカーを牽引してきた photo by AFLOこの記事に関連する写真を見る 成績が出ていない状況で施設が充実したら──日本人の一般的な反応としては、戸惑いや申し訳なさを覚えそうだ。「私もそうでした」と、川澄はうなずいた。

「アメリカへ行く前の私は、結果を出してから要求するスタンスでした。でも、あっちへ行ってみて、プロとしてこういう環境を提供しますよ、そのなかであなたたちは日々切磋琢磨して生きてください、という場所を先に作るのは、選手の意識を変える意味でもすごく必要だと学びました。

 日本にもWEリーグという場所ができていますから、あとはやっぱり、プロとしての責任と覚悟を見せていく、ということになるんだと思います」

 アルビレックス新潟レディースの選手として。
 プロ化以前を知る先駆者のひとりとして。
 アメリカでキャリアを積んだ経験者として。

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