川澄奈穂美「女性が安心して働ける社会を」 理事抜擢の理由は「私は思ったことを言っちゃうタイプ」だから (2ページ目)

  • 戸塚 啓●取材・文 text by Totsuka Kei

【AI化が進んで人の仕事がなくなるのはいいこと】

 自身のキャリアと出産や育児を、当たり前のように両立させていける社会の実現は、アスリートだけに求められるものではない。「女性が安心して働ける社会を作るには、周りのサポートは絶対に必要です」と川澄もうなずく。

「子どもが熱を出しました、という連絡が会社に入ったときに、『帰らなくて大丈夫?』と言われるのは女性ですよね。それって、男性も言われるのが当たり前になるべきだと思うんです。

 公共のトイレでも、おむつを替えるシートや乳幼児用の簡易的なベッドが置いているのは、圧倒的に女性用が多い。そういうものって当事者じゃないと気づかないとか、そもそも知らないとかいうこともあるでしょうから、出産とか育児に対する認識のところから理解を広げていかなきゃいけないのかな、と思いますけどね」

川澄奈穂美はアメリカで多くを学んだと語る photo by AFLO川澄奈穂美はアメリカで多くを学んだと語る photo by AFLOこの記事に関連する写真を見る アメリカでインスパイアされた思考は、柔らかい発想につながる。実効的なアイデアが、どんどんと出てくる。

「AI化が進むと人の仕事がなくなる、って言うじゃないですか。それっていいことだなと、私は思うんです。今はきっと、100人が必要な場所で100人が働いている。90人でやっているところもあるかもしれなくて、それだと切羽詰まってしまう。

 でも、100人でやっていた仕事を120人とか130人でやれば、全体的に余裕が生まれる。子どもが急に熱を出しても、『早く帰ってあげて』となるでしょう。産休や育休が取りやすく、育休後も子育てがしやすくなって、女性が働きやすい世の中になっていくんじゃないかと思うんです」

 宮本恒靖会長のもとで動き出した日本サッカー協会(JFA)で、川澄は理事に名を連ねる。会長とはJFAのアスリート委員会で、同じ時間を過ごした。

「私は思ったことを言っちゃうタイプで、忌憚(きたん)のない意見を言っていたので(苦笑)、それが評価? されたのかどうかはわからないですけれど......。JFAの理事なので、女子サッカーだけ、WEリーグだけをよくしようとは考えていません。

 女子サッカーを強くしていこうと思ってもらうためには、男子も、フットサルも、ビーチサッカーも、普及も、育成も、指導者養成も、いろんなところがうまく回転することで、女子も、もっともっとという流れになっていく。日本サッカー全体をしっかりと見て、よくなっていくためにどうするかというのは、忘れないようにしなきゃいけないなと思っています」

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