なでしこジャパン パリ五輪でメダルが望めない勝負弱さ 本番のメンバーはどうなる? (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko

【隙のあるチームに勝ちきれない】

 今回、課題として突きつけられた勝負強さについて言及する、長谷川の姿が印象に残る。PK戦の最後のキッカーとなった長谷川は、失敗に終わったあと、珍しく悔し涙を滲ませていたが、それは自らのPK失敗だけが理由ではなかった。

「PKはもちろん自分の責任。でも、そもそもPK戦にしてしまった時点で負けだった。後ろがしっかり守ってくれていて、(北川)ひかるがいいボールを何度もあげてくれて、それを得点にできなかったことに責任を感じます」(長谷川)

 今大会の4チームはすべてパリ五輪に出場する。しかもブラジルは日本と同じグループCに属しており、オリンピックの前哨戦としてこれ以上ない相手だった。アメリカ戦は勝てた試合、ブラジル戦は負けてはいけない試合だった。

「毎回、本大会じゃなくてよかったなっていう話をしていたら何も成長しない。今日(のブラジル戦)は勝たないと何も始まらないでしょっていう感覚を、自分のなかでは持ってます」(長谷川)

 パリ五輪の出場国は12チーム。アメリカ遠征を終えた同日に、ナイジェリア(FIFAランキング36位)がグループCに入ることが決定した。昨夏のワールドカップ出場国が32カ国であったことを考えると、いきなりベスト16からスタートするようなもの。容易く勝てる試合などひとつもないだろう。

 世界女王であり、FIFAランク1位のスペインがいるグループCを、日本はなんとしても上位通過し、決勝トーナメントに少しでもいい条件で進出する必要がある。その指標として今大会は大きな意味を持っていた。

 確かにアメリカ、ブラジルは強いが、それぞれの絶頂期ほどの怖さを感じることはなく、まだ仕上がってはいなかった。しかし、つけ入る隙のある相手に勝ちきれない現状の日本のままでは、メダル射程圏内と言うのは無理がある。

 パリ五輪まで4カ月を切った。残る実戦の機会は、5月下旬から予定されている海外遠征と、オリンピック直前に開催できるかいまだ不透明な強化試合。それを踏まえると、なんとももったいない今回の遠征になってしまった。ここから選手たちそれぞれのレベルアップに期待を寄せたい。

著者プロフィール

  • 早草紀子

    早草紀子 (はやくさ・のりこ)

    兵庫・神戸市生まれ。東京工芸短大写真技術科卒業。在学中のJリーグ元年からサッカーを撮りはじめ、1994年からフリーランスとしてサッカー専門誌などに寄稿。1996年からは日本女子サッカーリーグのオフィシャルカメラマンも担当。女子サッカー報道の先駆者として、黎明期のシーンを手弁当で支えた。2005年より大宮アルディージャのオフィシャルカメラマン。2021年から、WEリーグのオフィシャルサイトで選手インタビューの連載も担当。

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