日本代表のトップ下は久保建英か鎌田大地か 選択肢が増えたことこそW杯予選の収穫 (3ページ目)
【トライする余裕がある試合が続く】
前半37分の上田が中央で合わせた2点目のゴールは、まさにサイド攻撃の産物だった。主役となったのは左SBの伊藤。左から右の伊東に振り中央に戻すという理想的な崩しから生まれた。伊藤も正確な左足キックを売りにする選手だ。2点目ではその魅力が全開になった。長友佑都の時代にはなかなか味わえなかった類いのプレーになる。
後半2分に決まった4点目はFKから。菅原が右足のインフロントで蹴り込んだ。
SBが活躍するサッカーこそがよいサッカー。SBが活躍したほうが勝つ。SBをいかに有効に使うか、など欧州に浸透しているSBの概念が、日本代表でも急に開花したかのような伊東、菅原のプレーぶりだった。
5点目の得点者は上田と交代で入った細谷真大だった。現在22歳。追加招集で加わった五輪世代のこの選手はこの先、代表チームで何点とれるか。誰かが休めば、その穴を埋める選手が現れ、チームが循環すれば、おのずと選手層は厚くなる。逆に同じ選手を呼び続けることは、選手層を薄くすることにつながる。本大会まで2年半以上ある今は、細谷のような若手選手を代表に加え、積極的に試す時期でもある。
W杯2次予選はその余裕がある試合だ。ミャンマー戦とシリア戦で、その確信を掴めたはずだ。アジアカップしかりである。もし優勝を逃しても、2年半後に向けてどちらが有益かははっきりしている。ケガ人や体調不良者だけではなく、ベストメンバーを意図的に外す、先を見越して戦う余裕が森保一監督には求められている。
次戦、どれほどメンバーを落として勝てるか。ベストメンバー度の低いメンバーで勝利を重ねるほど、チームの総合力は上昇する。2年半後への期待は増す。森保監督の評価も上昇する。そこに目を凝らしたい。
著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。
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