「日本代表の力を史上最も世界に示した試合」スペインの知将がドイツ戦を分析 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

【守備の安定が攻撃を促していた】

 そう語ったエチャリは、得点の応酬について解説した。

「11分、日本は積極的な攻め上がりを見せていた菅原がクロスを送り、これに対し、真っ先に反応していた伊東純也がニアで合わせ、先制に成功している。敵陣に入り込めていたので、ゴールはひとつの必然と言える。意外なほど、呆気なく先手を取った。

 そこで私が着目したのは、攻めよりも守りのほうである。センターバックでコンビを組んだ冨安健洋、板倉滉がすばらしい連携を見せ、ボランチの遠藤、守田との関係性も含めて堅固さを保っていた。守備の安定が攻撃を促していたのは明らかで、これはサッカーの原理原則と言える。

 18分、日本はドイツの反撃を浴び、レロイ・サネの一撃で同点に追いつかれている。ただ、このゴールは相手を褒めるべきだろう。チームの連動と個人のセンスで奪った最高水準のゴールだった。

 だが21分、日本は浮き足立つことなく、すかさず逆転に成功している。再び、菅原からのクロスを伊東が触り、さらに上田綺世が反応し、ゴールに流し込む。同点にされても怯まずに攻撃に出られたのは、日本の進化の証だ。

 そして後半も、日本は攻守をコントロールし、戦いを不利にすることなく、見事に推移させていった。リードされたドイツが攻撃の強度を増したことで、谷口彰悟を投入し、5バックで守備を強化。ただし、あからさまに守りに入るのではなく、しっかりポジションを固める戦い方だった。それによって、完全に敵に主導権を渡さなかったのだ」

 エチャリは戦術運用の面で、成熟が見られる点を称賛した。

「各選手がやるべきことをわかっていて、最善の仕事ができていた。たとえば右からのプレーを担った菅原は殊勲者だろう。周りとの補完関係で、攻撃することによって、サイドでの攻防をリードさせていた。

 そして75分に入った久保建英は、1-2とリードした試合をクローズさせる仕事で、欧州で培った実力を見せている。これは決して簡単なミッションではない。優れた攻守のバランス感覚だった。

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