放送席は空のまま...世界が称賛したなでしこジャパンを評価しないのは「日本」だけだった (3ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【現地からの実況はなかった】

 日本は今回世界女王となったスペインをグループリーグで破っている。それもカタールW杯でサウジアラビアが優勝したアルゼンチンに大苦戦の末、1点差で勝利したのとは違い、4-0という大差をつけて。完ぺきな勝利だ。そして大会得点王には宮澤ひなたが輝いた。

 しかしそんなすばらしいチームに対しても、日本の関心は最後まで薄かった。最終的に放送を決めたNHKだが、現地の放送ブースに彼らの姿はなかった。彼らは最後までニュージーランドに来ることはなかった。1勝もできずに敗退したパナマだって、それを重々承知で、2つのテレビ局が取材、中継に来ていたというのに。ブラジルでは大会をテレビ、ラジオ、ストリーミングで中継し、現地には約60人のジャーナリストが来ていた。ブラジルから現地に来るのは、物価や距離を考えると、日本人よりはるかに大変だったはずだ。

 なぜ日本は日本を応援しないのか、世界中が疑問に思っている。

 現地に来ていた数少ない日本のジャーナリスト(彼らの多くはフリーランスだった)に私は率直にその疑問をぶつけてみた。国内が盛り上がっていないから。高校生の野球の大会があって今はそっちのほうに関心があるから。世界水泳やラグビーW杯があってそっちにお金がかかるから......。だが、テレビやメディアが報道しなければ、盛り上がらないのは当たり前だ。興味を持たすのがメディアの仕事ではないか。

 日本にはもっとこの大会と女子サッカーを盛り上げるチャンスがあったはずだ。初戦でザンビアに大勝した時、スペインを破った時、ベスト16に出た時。しかし結局、放送ブースは空っぽのままだった。スタジアムに来ていた記者の間では「今日も日本は現地実況しなかったよ」とジョークのように言われていた。

 それはつまり、彼女たちにはその価値がない、コストがかかりすぎると判断されたのだ。彼女たちはあなたたちの国を代表して戦い、日本の国歌を歌ったのに。

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