放送席は空のまま...世界が称賛したなでしこジャパンを評価しないのは「日本」だけだった (2ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【多くのブラジル人が日本を応援】

 放映権の差額をクラウドファンディングで集めるという話を聞いた時には、日本はどうしてしまったのかと、驚くよりも悲しくなった。日本は金のない国ではない。現在は円安でもあり、かつてよりは羽振りがよくないかもしれないが、それでも世界から見れば堂々たる金持ち国だ。その証拠に、この夏には多くのヨーロッパの名門チームが次々と日本で興行を行なった。パリ・サンジェルマン、マンチェスターシティ、バイエルン・ミュンヘン、インテル......。彼らを呼ぶ金はあっても女子のW杯に払う金はないのだろうか。日本のサッカーにとってどちらが重要なのかは、はっきりしているというのに。

 今年2月にアメリカで開催されたSheBelieves Cupでも、日本の試合は1試合もテレビで放送されなかったと聞いた。世界的に女子サッカーがどんどん盛り上がるなかで、日本は逆行している。その思いは大会が始まってより強くなった。

 今回のなでしこジャパンはすばらしいチームだった。この大会は番狂わせが多く、ブラジルは予選で敗退し、アメリカも早々に消え去った。しかしそのなかで、日本のモダンで聡明で勇敢なプレースタイルには誰もが喝采を送っていた。

優勝したスペインに唯一、勝利を収めた日本。写真は先制点を決めた宮澤ひなた photo by Reuters/AFLO優勝したスペインに唯一、勝利を収めた日本。写真は先制点を決めた宮澤ひなた photo by Reuters/AFLOこの記事に関連する写真を見る ニュージーランドのニュースメディア『Stuff』は、FIFAのテクニカルチームの意見も参考にして、グループリーグのベスト11を発表した。そこに最も多くの選手が入ったのは日本だった。DFの熊谷紗希、MFの長谷川唯、そしてFWの宮澤ひなたと田中美南と、11人中の4人が日本人選手だった。そしてラウンド16までの間で最も称賛された監督は日本の池田太監督だった。

 日本の皆さんは知らないだろうが、ブラジルが敗退した後、多くのブラジル人が日本を応援することに決めた。ブラジルのマスコミも、なでしこジャパンを大きく取り上げ、ブラジルの選手たちまでもが、今回のW杯のお気に入りチームに日本を選んだ。ブラジルサッカー界の女王マルタに、どこがワールドカップで優勝するにふさわしいか尋ねると、彼女は迷うことなく「日本」と答えた。

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