久保建英は「ボールを保持する時間を増やしたかった」。鎌田大地との両立は? (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

【「ボールを保持する時間を増やしたかった」】

 もしボールを握って相手を圧倒することを信条とするなら、久保と鎌田を同時にピッチに立たせないことはあり得ない。たとえば久保が所属するレアル・ソシエダだったら、ダビド・シルバと久保を同時に使わないようなものだ。

「誰と組むというのではなくて、いろんな選手と、誰とでも組めるように(したい)。確かにうまくいく選手はいるんですけど、誰かに依存するのではなく......」

 久保は試合後のミックスゾーンで、そう語っている。GK中村航輔を伴い、ステレオで音楽を流しながらの風変わりな登場だった。誰かに合わせるのではなく、周りに"合わさせる"ような気配を放つ。

「今日はカウンターでの展開が多かったですが、カウンターでも攻めきったのはよかったと思います。ただ欲を言えば、もう少し自分たちでボールを保持する時間を増やしたかったですね。まあ、結果がすべてですし、気持ちのいい勝利でした」

 久保は明るく、何気なく、本質的なところを語っている。監督のコンセプトは実行するし、守備面も要求以上にタフにできる。しかし、自分の色を最大限に出すにはボールを持てるかどうか、だ。

「自分には、伊東(純也)選手のように、『縦にいってクロス』とか、なかなか真似できません。まあ、右利きじゃないっていうのもありますが......。もちろん、縦にいけるほうが相手の脅威になるし、詰まったらやろうかなと思っていますけど」

 久保は他の選手とのスタイルの違いを理解しながら、自分のよさを出している。その点で力みもない。今シーズンの彼の成長と言える。

 ラ・レアルでの成功体験が大きいのだろう。シルバを筆頭に、ミケル・メリーノ、ブライス・メンデス、アレクサンダー・セルロートなどと連係し、彼のサッカーは無限になった。右サイドから切り込むプレーは得意だが、左サイドでのプレーも精度が増した。何より中央で自由を得た時は無双で、求心力が出た。たとえば主力のスペイン代表ミケル・オヤルサバルがケガから復帰した直後は噛み合わなかったが、アジャストさせた。

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