【谷口彰悟・新連載】日本代表でベンチ続きの日々に何を考えていたか カタールW杯運命のスペイン戦は「絶対にやれると思っていた」 (2ページ目)

  • text by Harada Daisuke
  • photo by Sano Miki

 それくらい、ワールドカップは子どものころからの憧れであり、サッカーを続けてきた自分にとっては絶対に立ちたい舞台だった。そこに手が届きそうな位置にいるのであれば、何としても掴みたかった。

「ワールドカップを見るのではなく、戦いたい」

 海外でプレーすることが願望から目標に変わったあの日のように、ワールドカップに出るチャンスを掴みたい、もしくは掴まなければならない目標になった。

 実際、カタール・ワールドカップを戦う日本代表に選ばれた時は、ありきたりだが言葉にはできないほどうれしかったし、試合に出ようが出まいが日本のために、チームのために戦おうと決めていた。でも、それと同時に、ただ選ばれただけで終わるのではなく、チャンスが巡ってきた時には絶対にやってやる、やれるとも思っていた。

 グループステージ第1戦のドイツ戦、第2戦のコスタリカ戦に出場できずとも、準備を怠らずに、トレーニングも含めてベストを尽くしていたから、第3戦のスペイン戦の出場、2-1での勝利につながったと思っている。

 それくらいブレることなく、ワールドカップ前も含めたあの1カ月半は、いつチャンスが来ても掴めるだけの状態を保つことができていた。

 思い起こすと、プロになってからの9年間、フロンターレでいろいろな人たちを見てきたことが大きかった。

 試合に出るか出られないかの瀬戸際にいる選手たちのなかに、言い訳をすることなく、そして他人を妬むことなく、黙々と取り組んでいる選手がいた。そういう選手の姿勢を見ていると、その選手が出場機会を掴んだ時には、自分もその選手に結果を残してほしいと思って一緒にプレーをしていた自分がいた。

 なにより、そうした少ないチャンスをモノにして、自分のポジションを確立していった人たちをたくさん見てきた。もちろんそのなかには、自分が置かれた境遇に、時には甘んじてしまったり、時にはクサってしまったりして、チャンスを逃してしまった選手もいたんだと思う。

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