森保一日本代表監督が見せた素早い選手交代 問題はこれを競った試合でできるかだ (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

【日本の勝利は続くだろうが...】

 森保監督がエルサルバドルの監督だとしたら、同じような采配ができるだろうか。強者相手に前半早々0-2とリードを奪われれば、即刻5バックに変更するのではないか。カタールW杯の采配を基に察すれば、怪しいと疑わざるを得ない。

 世界ランク75位のエルサルバドルにとって、20位の日本とアウェーで対戦することは、たとえ6-0で敗れても有意義な経験になる。だが、日本にとってはどうなのか。弱者とのホーム戦を繰り返せば勝利は続くだろう。そうしたなかから森保ジャパンの可能性を簡単に探ることはできない。

 6人が交代したこの試合、MFより前方で構える選手のなかで最後までピッチに立ったのは旗手怜央だった。チャンピオンズリーガーでありながら、カタールW杯の最終メンバーから落選。3月のウルグアイ戦、コロンビア戦にも招集されなかった、森保監督から低い評価を受けていた選手である。

 左SBまでこなせるこの多機能型選手をなぜ外したのか。このエルサルバドル戦で何かを語るのは難しいとはいえ、フル出場に値する安定感溢れるプレーを披露したことは確かである。先述のクロアチア戦も、旗手がいればより複雑で戦術的な交代は可能だったはずだ。交代カードを余すことなく敗れることはなかったと考える。最近、「多機能」という言葉をよく口にする森保監督だが、過去の反省も併せたほうが説得力があるのではないか。自分の弱みをさらけ出したほうが信頼、共感は得やすいと考える。

 2026年北中米W杯まで丸3年。森保監督は現状、不足しているそのカリスマ性にどう磨きをかけていくか。日本代表の浮沈のカギはそこにあると考える。

プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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