森保一日本代表監督が見せた素早い選手交代 問題はこれを競った試合でできるかだ (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

【2-0となって攻めあぐんだ理由】

 追加招集した伊藤敦樹も15分程度ピッチに立たせることができた。褒めるほどではないが、結果として大勝劇を有効に使うことができたと評価できる。この采配を、競った試合でも披露することができるか。

 想起するのは先のカタールW杯。延長PK戦でクロアチアに敗れた決勝トーナメント1回戦だ。森保監督は交代枠を使いきることなくタイムアップの笛を聞いた。最善を尽くさずに敗れた。その4年半前のロシアW杯もそうだった。ベルギーと戦った決勝トーナメント1回戦。西野朗監督は交代枠を使いきらずに敗れている。

 使いきる術を知らなかったからである。ベンチの選手に言わせれば「ふざけるな」だろう。口には絶対に出さないが、内心では100%そう思っているはずである。その監督が続投した。森保監督が選手から信頼されるためには、クロアチア戦の采配を失敗と認め、その後の選手交代に活かすことだ。実力が拮抗する次戦のペルー戦でも、エルサルバドル戦と同じような早めの交代ができるか。
 
 0-6で敗れたエルサルバドルのアメリカ人監督、ウーゴ・ペレスは、自らのサッカーについて「攻撃的だ」と述べた。「ボールを支配し、高い位置からプレスをかける。それが本来のサッカーだ」と。森保監督も「アグレッシブなサッカー」など、いろいろ口にしていたが、哲学性と明快さという点でペレス監督に劣った。

 上田綺世がPKを決めて2-0とした後、日本は攻めあぐんだ。10人になったエルサルバドルに抵抗された。前半25分、久保建英が3点目のゴールを奪うまで、6-0のスコアは予想できなかった。それとセンターバック(CB)が退場しながら4-2-3のスタイルを貫いたペレス采配は深い関係がある。

 ペレス監督は「0-2にされてしばらく、同じスタイルで頑張ったが、あれが限界だった」と言う。3点目を奪われると、さすがに観念したかのようにFWを下げ、5バック気味で構えたが、筆者にはそれが監督にカリスマ性を感じさせる、1本筋の通った勇敢な戦い方に見えた。

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