検索

森保一日本代表監督が見せた素早い選手交代 問題はこれを競った試合でできるかだ

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 エルサルバドル。世界ランクは日本の20位に対して75位だ。次戦の相手ペルーは21位だが、日本が今後、ホームで戦う親善試合の相手は、今年3月に対戦したウルグアイ(16位)、コロンビア(17位)をピークに下がっていくものと推測される。

 弱者をホームに招いてどう強化につなげるか。これこそが森保一監督に課せられた大きな課題に他ならない。問われているのは勝ち方だ。いわゆるベストではないメンバーでテストを兼ねながら、まさにいい感じで手を抜きながら、品よく勝利を追求する。馬鹿真面目にベストを尽くし、勝てばオッケーという姿勢で戦っていては伸びしろがない。

 もっと若手を登用せよとは、今回の招集メンバー発表会見後の原稿でも触れたが、代表監督の悪い意味での真面目さが、日本代表の何よりの心配事だった。

 心配が、このエルサルバドル戦のスタメンを見て、少しばかり和らいだことも事実だった。初代表の森下龍矢が左サイドバック(SB)に名を連ねていたからだ。森下と言えば、エルサルバドル戦の会場である豊田スタジアムをホームにする名古屋グランパス所属のご当地選手。粋な計らいを見せたわけだ。

 森保監督がこの手のサービス精神を発揮した例は過去にあまりないはずだ。外国のナショナルチームでは常識となっているこの風習を、森保監督が身につけていないことに最近、苦言を呈したことがあるので、確かだと記憶する。

 ご当地選手では、昨季まで名古屋でプレーした相馬勇紀も、右SBとして後半の頭という早いタイミングで投入されている。右SBで先発した菅原由勢も名古屋ユースの出身だ。

エルサルバドル戦にフル出場、安定感溢れるプレーを見せた旗手怜央エルサルバドル戦にフル出場、安定感溢れるプレーを見せた旗手怜央この記事に関連する写真を見る 選手交代もいつになく早かった。開始1分に谷口彰悟がヘディング弾で先制すると、その直後の4分にもPKで加点。反則を犯した選手がレッドカードで退場になった瞬間、勝利は揺るがぬものになっていた。試合後の会見で「前半を大量リードで折り返したことで、後半の選手交代に影響が出たか」と尋ねられると、森保監督は「はい」と素直に答えている。

1 / 3

著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

フォトギャラリーを見る

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る