ジーコが語った20年前の日本代表 「中田英寿、中村俊輔...日本には4人の大黒柱がいた」 (5ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 ある試合では相手の選手がボールを手で触った。明らかなファウルだ。日本の選手たちはそれを見て動きを止めた。当然、試合が中断されるものと思ったからだ。しかし審判はそれを見てはおらず、こちらが動きを止めているうちに、敵は攻め上がってしまった。相手チームはハンドしたことは重々承知だが、それでも笛が吹かれない限りは止まらない。これが「マリーシア」だ。決してルールを軽んじているわけではないが、自分で勝手に判断し、チームを危険に陥れてはならない。

 あまりにもイノセントなプレーで、日本は多くのボールを失っていた。それが失点に結びつくことも少なくなかった。こうして選手たちも少しずつ、「マリーシア」が悪いものではないことを理解するようになってきた。「マリーシア」を使ったからといって、それは決して嘘つきでもルール違反でもない。ただ、現実的で、抜け目がないということなのだ。世界中の選手がこの「マリーシア」を持ってプレーしている。
 
 今日の日本代表の試合を見る限り、日本の選手たちもこの「マリーシア」をかなり身につけているように思う。ただフェアプレーの精神は変わらない。日本はいつもフェアプレーのお手本となるチームだ。私もその点を変えようとは思ったことは決してない。

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