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ジーコが語った20年前の日本代表 「中田英寿、中村俊輔...日本には4人の大黒柱がいた」 (4ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【「マリーシア」を伝えた】

 人は自分の意見やアイデアを、時には変えなければいけないことを知っておくべきだ。私はその選択とタイミングを間違わなかったことを満足に思う。日本の成長の邪魔をすることにはならなかった。

 私が日本に何をもたらしたか、どんな貢献をしたかという話を、人々はしたがる。まず私は、ピッチ外での出来事について、日本の皆さんに話しておきたい。

 日本にいる間に関わったすべてのチームの環境整備にひと役かえたことも、私が満足に感じることのひとつだ。

 ホペイロ(用具係)の在り方、ピッチのメンテナンスの仕方、練習の時間配分、食事、ロッカルームでのメンタリティの持ち方等、本当に多岐にわたる。世界の最高水準のプロのやり方を、私は日本サッカーに取り入れたかった。

 もうひとつ、私が日本サッカーにもたらしたことのひとつに「マリーシア」という言葉がある。多くの日本人はこれを「狡猾」とか「悪辣」などネガティブなことと解釈する。しかし、私は長い時間をかけ、「マリーシア」とはその反対で、決して悪いものでも危険なものでもないことを説明してきた。

 最後のほうには多少わかってくれたのではないかと思っている。我々がポルトガル語で「マリーシア」と呼ぶものは、日本のサッカーの発展に役立つものだと気がついてくれた。

 いい意味でのずる賢さ。ルールを破るものでは決してないが、四角四面にとらえるものでもなく、一瞬先をいくイマジネーションを働かせることだ。

 たとえば、選手と選手がぶつかって、その場からボールが転がっていってしまった時、往々にして選手たちはそれがファウルだと理解する。そうなると日本の選手は全員が動きを止めてしまう。しかし私が教えた「マリーシア」では、もし主審が笛を吹かなければそのままプレーを続けろと言うことだ。動きを止めた選手たちに私は何度もこう尋ねた。

「誰かが笛を吹いたか? 誰かが君たちに止まれと言ったのか?」

 彼らは首を振る。それならプレーはまだ続いているのだ。「自分たちの頭で判断して動きを止めるな」「君たちがどう思おうが、プロサッカーの世界では審判が笛を吹かない限り、試合は続行されているのだ」と、繰り返し言ったものだ。

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