トルシエがカタールW杯を総括。「日本の立ち位置は世界のトップ30か、せいぜいトップ20。それが現時点での真実だ」

  • 田村修一●取材・文 text by Tamura Shuichi
  • photo by JMPA

フィリップ・トルシエの哲学
連載 第3回
カタールW杯と森保ジャパンを語る(5)

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 カタールW杯後、日本でにわかに話題となったのは"PK論争"だ。

 カタールW杯でオランダ代表のGKコーチを務めたフランス・フックによれば、オランダはすべての練習の最後に、本番と同じ形式でPK戦の練習をしていた。その際に(キャプテンの)フィルジル・ファンダイクは1度として外したことがなかったが、準々決勝のアルゼンチン戦でのPK戦では、彼の失敗がオランダの敗退につながった。

 フィリップ・トルシエは、「それもどうしようもないことだ」と語る。

「20~30年前にはミシェル・プラティニも、ジーコも、ディエゴ・マラドーナもPKをしくじった。たぶん、ペレも失敗しているだろう。今後もそれは同じで、10年後、20年後もPKの失敗はなくならない。キッカーがPKをしくじるか、GKが止めるかだ。PKの成否はしばしばGKの対応に左右されるからだ」

日本で起こった「PK論争」には疑問を呈すトルシエ日本で起こった「PK論争」には疑問を呈すトルシエこの記事に関連する写真を見る さらにトルシエは、キリアン・エムバペのケースも引き合いに出した。

「モンペリエ戦(リーグ・アン第21節/2月1日)で、エムバペはPKを2度しくじった。同じエムバペが、W杯決勝では3度のPKを決めた。つまりは心理的な問題であることが多く、エムバペが続けて失敗したのは、彼の脳細胞が集中していなかったからだろう」

 そうであるからこそ、オランダ代表のように練習に励むしかないとトルシエは言う。

「練習のあとにいつも蹴っていれば、自分の決めたコースに正確に蹴れるようになる。コースやボールの強さ、角度などをトレーニングすべきで、強いボールをゴール上隅に蹴れれば、たとえGKの予測が合っていても止めるのは難しい。それがメカニカルにできるまで繰り返し練習する。

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